
世界中で急速な成長を見せるRPA分野。Gartner社によると、世界のRPA市場の売上高は2021年に20億米ドルに達すると予測されており、2020年から19.5%の増加となっています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の落ち込みにもかかわらず、2024年まで2桁の成長率を維持すると予測されています。
成長産業では多くの場合採用活動の強化が見られるため、今後RPA関連の求人が増えていくことが予想されます。この記事では、RPA分野の転職に焦点を当て、RPA関連求人における面接対策として、事前に回答を準備しておくべき5つの質問をご紹介します。
RPAとは?
RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、これまで人間が行っていた作業(主に定型的な作業)をロボットによって自動化することを指します。データ入力や定型レポートの作成など、業務手順が決まっているもの人力で行うと時間がかかり、人的ミスの発生も起こり得るようなルーティーンワークを自動化してコンピューターに処理をさせることで、業務効率化や人件費の削減につながります。
日本におけるRPA
世界的な統計データベースであるStatistaによると、日本のRPA市場は順調に成長し、2023年には1500億円以上の市場規模になると予測されています。このような急速な成長が予測される背景には、以下のような理由があります。
- 長時間労働や残業が多いとされる従業員のワークライフバランスの改善
- 日本政府が、日本を世界のロボットイノベーション拠点とすることを目指し、ロボティックオートメーションの研究開発予算を3億5,100万円に増額していること
- 高齢化による労働人口不足
RPAの普及は、煩雑なオペレーションやマニュアル作業を必要とするほとんどの業界で見られます。特に、日本の経済を支える柱である自動車産業や製造業では、その傾向が顕著です。
自動車産業におけるRPA
自動車業界では、RPAを活用して業務を効率化し、手間のかかる作業を自動化することでコストを削減しています。これにより、従業員はより価値の高い仕事に集中できるようになります。
とりわけ、原材料の調達や生産、出力の管理などにおいて業務プロセスが確立している自動車工学や自動車製造の分野では、RPAは大きな価値を発揮します。大手自動車メーカーの中には既存のプロセスにおいてRPAを導入し自動化を開始している企業もありますが、保守的な社風や、長年手作業に依存してきたことによるプロセスやタスクの属人化により、RPAの導入が遅れていたり、導入に消極的だったりする企業も多く見られます。
しかし労働人口の高齢化が顕著な社会においては既存のプロセスの見直しは遅かれ早かれ多くの企業が避けて通れない道であり、技術革新によってRPAソリューションの導入も以前より容易になっていることから、今後導入が増えていくことが見込まれています。
RPAの面接質問例
RPA関連の求人へ応募する際、多くの場合、面接は技術的なスキルを評価するための面接(面接約2回分)と、企業へのカルチャーフィットを評価するための面接(面接約1回分)で構成されます。以下では、自動車業界を中心に、あらゆる業界で想定される面接質問の例をご紹介します。
質問1:あなたの過去の実務経験において、RPAの各フェーズにおいてどのような役割を担いましたか?
この質問に適切に答えることで、RPAプロジェクトに参加した際の皆様の思考プロセスや戦略を立てる能力を面接官に伝えることができます。以下に代表される各フェーズに置いて担った役割や課題解決の例を、皆様の経験に基づいてアピールしましょう。
- 発見段階
- ソリューション設計段階
- 開発フェーズ
- ユーザー・アクセプタンス・テスト(UAT)
- デプロイメント・メンテナンスフェーズ
- ボットの実行
質問2:人工知能(AI)とRPAの融合についてどのように考えていますか?
RPAとAIの融合は、新たな可能性の扉を開くものとして話題になっています。面接官の質問の意図は、皆様がAIに関する知識をどの程度持っているのかを知るため、また、皆様の発想が企業にとって価値をもたらしてくれるかどうかを評価するところにあります。
ワークフローにAIスキルを適用する、ロボットに思考タスクを教える、人間による検証とロボットの学習能力の双方を活用してデータの精度を上げ、ロボットのパフォーマンスを向上させるなど、回答の幅は様々です。応募先企業のビジネスモデルや募集求人の職務要件を見直し、自分であれば作業プロセスにどのような改善を加えることができそうかを事前に考えておくと良いでしょう。
質問3:使ったことのあるツールの名前を教えてください。
これは技術的なスキルを評価する際によく聞かれる質問です。質問の意図としては、皆様の経験を知ると同時に、技術力の背景を見ることで今後必要なツールの使い方を学ぶ際にどのくらいの時間や労力がかかるかを判断するためです。
たとえば、BluePrismを使っていた経験がある場合、BluePrismはビジネス目標を設定するためのツールであり、オペレーション上規模の拡大が容易なようにコントロールセンターで管理がなされていること、デスクトップやウェブ、仮想環境での自動化に用いられ、RPAボットはバックオフィス機能を高速で処理する目的でのみ利用されることなどを面接官に伝えることで、応募職種で利用予定のツールとの共通点を見出すことができるかもしれません。
また、ご自身が使っていたツールによっては、プログラミングやコーディングの知識がなくてもコードを書くことのできる機能が備わっているなどの特徴もあるかと思います。ご自身に馴染みのあるツールについて相手が豊富な知識を持っているとは限りませんので、正しく、そしてわかりやすく説明できるようにしておきましょう。
質問4:各RPAツールの特徴を踏まえて、特定のプロジェクトの目的を達成させるためにどのようなアプローチを取りますか?
前述の質問3を踏まえ、皆様がツールそのものに加えて、それぞれの特徴や向き不向きをどの程度理解しているか、また実際の業務目標に当てはめてどのように異なるツールを活用できるかを評価するために、このような質問がされることもあります。回答例としては、「Automation AnywhereではRPAボットはフロントオフィスとバックオフィスの双方で使われるため、業務効率化を焦点に置いたプロジェクトにとっては非常に良い選択肢となる」などがあります。
また、各フェーズで細かな修正が想定されるプロジェクトにおいては、スマートレコードやウェブレコード、スクリーンレコードなどのサポート機能を通じて、アクションの記録や変更が可能なツールの名前を出しても良いかもしれません。これらのレコーディング機能はコードを書く必要がないのも特徴です。一方、UiPathは視覚的なデザインを持つツールで、その迅速なプロセスの実行が特徴です。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング、すなわちバックオフィス機能の委託)における自動化や、仮想環境の自動化に用いられます。
質問5:自動化の計画段階において、考慮しておくべき要素はどのようなものですか?
これはRPAプロジェクトの計画に影響を与える様々な可変的な要素に対して、皆様がどの程度事前に予測して計画を立てることができるか、またいざ変更が余儀なくされた際にはどのように軌道修正を行うかを評価するための質問です。まずはプロジェクト要件を正しく理解して適切なツールを選び、プロジェクトを進めるためのフレームワークを決めて、プロジェクトの成果物を整理する能力を示すことが必要となります。
RPAには以下の4つの段階があります:
- 計画 – どのプロセスを自動化するかを特定します。テストオブジェクトやアプローチ最終的な決定に加え、RPA実行の道筋を定義します。
- デザインと開発 – 計画に則り、自動化のワークフローを開発します。
- 導入とテスト – ボットの実行を通じて正確に機能するかどうかを確認し、ワークフローの欠陥を特定し、適宜修正を行います。
- サポートとメンテナンス – 導入後に発覚したエラーのモニタリング及び修正をその都度実行します。
日本におけるRPA分野の今後
RPAが組織にもたらす利益は大きく、自動車産業や製造業におけるRPAの導入や成功例も増えてきています。求められる人材像も、RPAで置き換えることのできるような作業(データ入力や伝票管理などの事務作業や製造工程におけるプロセス化されたた作業)を得意とする人材から、必要な作業を自動化し、人間にしかできない、または人間が行った方が効率の良い作業を進めることのできる人材へと変化していくことが予測されます。すなわち、作業の切り分けを行うと同時に、以前はより上流の責務とされていた作業やタスクのマネジメントができる人材への需要が高まっていくこととなるでしょう。
弊社ではRPA分野のポジションを数多くご紹介可能です。また、業界の展望や他業界との比較など、各種ご相談も随時受け付けております。RPA領域のスペシャリストをお探しの方、また当領域でキャリアアップの機会をお探しの方は以下のフォームからお問い合わせください。