
かつては総合商社や銀行、メーカーに入社すれば生涯安泰と言われていたものですが、大手企業の掲げる終身雇用制度は時代に合わなくなってきている側面も見られます。世界の企業時価総額ランキングによると、1989年(平成元年)では上位5社を日本のメガバンクやNTTなどの日本企業が独占していたものの、2020年にはAppleやAmazon、Microsoftなどの海外IT系メガベンチャーが上位を占めることとなりました。
大手企業でも経営不振に陥ったり人員削減を行ったりする事例が増える中、真新しい事業に携わる機会やご自身のスキルアップを求め、ベンチャー企業への就職・転職を検討する方も多いのではないでしょうか。今回は、ベンチャー企業への転職を成功させるための秘訣についてご紹介します。
[目次]

こちらの記事では、フィンテックのスタートアップやベンチャー企業への就職・転職をお考えの方に向け、フィンテックの各分野における主要スタートアップ・ベンチャー企業をご紹介しています。
記事を読むベンチャー企業の定義とは?
ベンチャー企業とは、従来提供されていなかった独自の技術やサービスを提供する新興企業のことを指します。具体的には、
- 新しい事業、サービスやビジネスを展開している
- 成長過程にある
- 大企業が着手しにくい事業を展開している
といった特徴が見られます。
ベンチャー企業と似た企業や組織の名称としてスタートアップやジョイントベンチャー、メガベンチャー企業などがありますが、それぞれベンチャー企業とは異なる特徴があります。
- スタートアップ企業・・・新しいサービスやビジネス、事業を展開しており、短期間での急成長が見られる企業。ベンチャー企業における設立直後のシードからアーリーステージ(記事内下部で解説)をスタートアップと呼ぶこともある。
- ジョイントベンチャー(Amazon、LINE、サイバーエージェントなど)・・・複数の企業が出資し合い設立した企業。合併会社とも呼ばれる。
- メガベンチャー企業(楽天、DeNAなど)・・・新しい技術やビジネスモデルを生み出し、大企業へと成長したベンチャー企業のこと。従業員が1,000人以上の企業が対象となる。上場している企業も多いため、社会的信用が高く、雇用や給与が安定している傾向にある。
特にスタートアップとベンチャー企業に関して、どちらも設立されて間もない会社を表す言葉として混同される場合も多くありますが、この二つにはビジネスモデルと収益性において大きな違いが存在します。
ベンチャー企業の場合、既存のビジネスモデルを参考にしながらスケールを拡大し収益を得る工夫をします。早い段階での黒字化を目指し着実な成長を求めて経営を行うため、長期的にじわじわと右肩上がりの成長を続けていくイメージと言えます。
一方、スタートアップは世の中にインパクトを与えるビジネスが大きな目的であり、そのために今までにないイノベーションを起こして新しいビジネスモデルを手探りで構築していくことになります。そのため、設立から赤字が続く「Valley of Death」と呼ばれる期間が存在し、ベンチャー企業に比べリスクも成長率もまた異なったものになります。
ベンチャー企業へ転職するメリット・デメリット
ベンチャー企業に転職するメリットとしては、以下が期待できます。
- 将来起業・独立するためのノウハウが学べる
- 様々な業務を任せてもらえ、やりがいを感じられる
- 社長や上司との距離が近く、意見を言いやすい
- 意思決定の早い、スピード感のある環境で仕事ができる
- 世の中に新しい価値観を発信できる
- 自己成長の機会が多く、出世するための近道になる場合も(入社二年目から数十名の部下を指導するケースも少なくない)
- 企業によってはストック・オプションが与えられる
一方、ベンチャー企業へ転職するデメリットとしては、福利厚生が確立していないケースがある点、一人当たりの仕事量が多く、ハードワークが求められる場合がある点などが挙げられます。とはいえ、特に将来起業や独立を考えている方にとっては、様々な仕事をこなしながら常に自身のスキルアップの機会に恵まれているベンチャー企業は、キャリア形成のために最適な職場となることが期待できるでしょう。
ベンチャー企業への転職を成功させるためのコツ
そもそもベンチャー企業はどのような人材を求めている?
ベンチャー企業と一言で言っても、企業によって適性や求められる人材は異なりますが、以下のような人材がスピード感のあるベンチャー企業への転職に向いている傾向にあると言えます。
ベンチャー企業転職に向いている人の特徴
- 積極的かつ学ぶ意欲が強い
- 職種を超え、複数の業務をこなすことができる
- 柔軟性があり、新しいことに適応できる
- キャリアプランや自分の実現したいことが明確である
では、ここからは、実際にベンチャー企業への転職を成功させるためのコツをご紹介します。
経営者のビジョンや社風をよく知る
ベンチャー企業ならではの特徴の一つに、経営者との近い距離感が挙げられます。経営者が掲げる事業のビジョンや仕事の進め方に賛同できない場合、いざ入社することになったとしても後々不満を溜め込むことになるでしょう。面接では、経営者が今後どのように事業を創り上げていきたいかといった内容の質問を投げかけ、内容が賛同できるものであった場合は、そのビジョンの実現のために自身がどのように役立つことができるのかを伝えるようにしましょう。
また、ベンチャー企業は良くも悪くも経営者の考えや思想が色濃く反映される組織とも言えます。会社の文化やルール・制度に関しても例外ではなく、大手企業と比べても特色が出やすいと言えるので、こちらも面接などの際にチェックするようにしましょう。
企業の成長フェーズと自分の強みがあっているか見極める
ベンチャー企業には4つの異なるフェーズが存在します。応募する企業が現在どのフェーズにあるか知り、入社後も自分の強みが生かせるか、活躍できるイメージが湧くかを一度考えてみましょう。
ベンチャー企業における4つの成長フェーズ
- シードステージ:会社設立前のステージです。創業メンバーとして会社の全てを一から作っていくことが求められます。
- アーリーステージ:会社設立直後、マネタイズ前のステージです。組織が拡大し始めるタイミングで、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、人事総務、経理、法務、開発などすべてを横断的に対応する可能性もあります。
- ミドルステージ:社外からも認知されるようになり、赤字で低収益が続くフェーズです。資金調達を行うためのIRや財務経理の責任者を募集する企業も多くあります。
- レイタ-ステージ:事業が拡大、黒字化し、上場が視野に入ってきます。新たな収益の柱を生み出すために新規事業に投資を行い、既存サービスの仕組み化や改善も進むため、様々な職種において採用が行われます。
自身のキャリアプランを明確にする
ベンチャー企業で成果を出すためには、転職活動を始める前に一度、ご自身のキャリアプランを練り直す必要があります。自分で仕事を作る必要のある環境であるからこそ、入社後どのような仕事に取り組みたいのかという具体的なイメージがないまま入社してしまうと、チャンスを逃してしまう可能性もあります。「入社後は数年間経験を積み、最終的には起業したい」「一緒に事業を大きくしてグローバル展開に貢献したい」などの、最終的に達成したいゴールを明確にしてから転職活動を始めるようにしましょう。
生存率の高いベンチャー企業を見極める
大企業と比較した場合、ベンチャー企業の倒産リスクは高いと言えます。今後成長するベンチャー企業を見極めることは簡単ではないかもしれませんが、以下、成長が見込まれる企業に共通する点をまとめました。
・独自性の高いビジネスモデルを持ち、事業に将来性がある
・経営者が魅力的
・明確に差別化された技術を持っている
このように、大手企業には真似できないような何かを持ち合わせている企業は成長が期待できると言えます。一方で、「この企業の強みは何か?」と尋ねられた際に答えに詰まる場合、転職先としての候補を考え直してみた方が良いかもしれません。
自分に合ったベンチャー企業を選択するために
スタートアップやベンチャー企業に転職することで、経営層と距離が近い環境で働くことができる、様々な業務に携わることができる、起業のノウハウが学べるなどの多くのメリットが期待できます。一方で、ベンチャー企業の社風やビジネスの方向性に関してご自身で探るのには限界があり、入社してからミスマッチに気が付くケースも少なくありません。
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