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ここ数十年にわたり、レガシーシステム(旧型システム)の近代化は、IT業界における難問のひとつとされてきました。企業によっては旧世代の技術がまだ必要であるとも捉えられており、未だに新技術への転換のタイミングを伺っている状態にあります。

レガシーシステムの寿命は長いため、現在システムに依存している銀行や政府の業務が停止するとは考えにくいものの、近代化されていないレガシーシステムがいつまでも稼働し続けられるとも考えにくく、加えてこれらのシステムを適用し続けることによる問題点も多く見られています。

今回の記事では、レガシーシステムが問題となっている背景と具体的な問題点、そしてレガシーシステムを脱却しDX(デジタルトランスフォーメーション)を可能にするために企業がすべきことについて、国外での調査や取り組みも参考にしながら解説します。

 

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、導入から長い期間が経過した旧型のシステムのことを指し、具体的にはメインフレームと呼ばれる大型コンピューターやオフィスコンピューター、構築から20年以上経過したシステムがレガシーシステムと呼ばれます。

レガシーシステムとは、「時代遅れのシステム」とも呼ばれ、ブラックボックス化やシステムの肥大化・複雑化、技術の老巧化などが問題となり、官民問わずDX推進の足かせとなっています。

 

世界においてレガシーシステム脱却の動きが生まれたワケ

1970年代から1980年代にかけてコンピューター技術をいち早く採用した、銀行業、小売業、政府などの大手バーティカル市場では、レガシーシステムが根強く残っています。英国金融行動監視機構による2021年の調査では、金融企業の90%以上が、サービスを提供するためにレガシー技術に依存していることが判明しました。この割合は保険業界で最も高く、回答者の約4分の3がインフラとアプリケーションのほとんどが未だに旧型であると答え、保険業界の回答者も100%が何らかの形でレガシー技術に依存していると答えています。

金融業界の既存企業では、柔軟性とオープン性に欠けるテクノロジーがITこれらの理由からも、様々な業種で企業はレガシーシステムから脱却すべき時期を迎えていることが分かります。

また、2000年代に入ってから、レガシーシステムと呼ばれる技術の対象にも変化が見られています。20年前、レガシーシステムは主に1970年代と1980年代のメインフレームとミッドレンジハードウェアのことを指していましたが、今日のレガシーシステムでは、2000年以降に導入された初期のJavaやNETアプリケーションなどの技術を除き、そのほとんどがソフトウェアを意味するようになっています。これはこの数十年でサーバーハードウェアのコモディティ化が進んだことによるものです。

この新しいレガシーの例としてよく知られているのは、2001年に初めてリリースされたMicrosoftWindows XPオペレーティングシステムです。Spiceworksが2019年に行った調査によると、調査対象となった企業の32%が、Windows XPは2014年以降Microsoftによってサポートされていないにもかかわらず、少なくとも1台のネットワークデバイスにインストールしたままであることがわかりました。また、同調査では、79%の企業がMicrosoftが2020年1月にサポートを終了したWindows 7を使用していることがわかりました。

Windowsの旧バージョンが引き続き運用要件を満たしている場合、組織が最新バージョンにアップグレードしないのも頷けます。しかし、更新やサポートがなければ様々なサイバー脅威にさらされることとなります。そのため、ハッキングの成功例やその被害の大きさが認識されるにつれて、レガシーの近代化を支持する意見が急速に高まりました。

 

日本におけるレガシーシステム-25年の崖とは?

日本におけるレガシーシステムに関連して、「2025年の崖」というワードがしばしば耳にされます。経済産業省は2018年、DXレポートにおいて、デジタル技術を活用してビジネス改革をすることで競合他社に対して優位性を保つ必要があると提言しました。その一方で、前述の通り、多くの企業では未だにレガシーシステムが適用されており、DXへの足かせとなっていることを指摘し、これらの多くの企業が今後もレガシーシステムを運用し続けることで、2025年には経済が停滞することを懸念しており、以下のように、これを「2025年の崖」と表しました。

 

” 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化・経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)“ 出典:DXレポート)

 

システムを更新できないことから、国際競争への後れ、サポート終了やシステムを開発した人材の退職による経済損失などが大きな懸念点として挙げられています。DXを進めるためにも、それぞれの企業がレガシーシステムからの脱却へ向けたビジネス改革を求められています。

 

レガシーシステムが抱える問題

企業視点で見た、レガシーシステムを適用し続ける問題点は何でしょうか?

 

高いコスト

レガシー技術に関する課題の一つとして、高い維持費用が挙げられます。レガシーシステムはメンテナンスが大変なことで知られており、そのための運用費(。例えば、Cloudsoftは、新しい技術はレガシーシステムよりも同じ量の仕事をするのに消費する電力が少ない(そして熱を発生させない)と考えています

また、レガシーシステムの維持費用は、古くなればなるほど増大するため、すでに過大となっているIT関連のための予算の中でより大きな割合を占めるようになる可能性があります。一部の業界(小売業がよく例に挙げられます)では、IT予算の半分以上がレガシーシステムの維持に費されていると報告されています。また、新しい IT システムの多くは、人手をかけずに運用できるように設定できますが、レガシーシステムは自動化に対して寛容ではありません。

サポート契約の終了や更新の煩雑さは、企業がレガシー・プラットフォームやアプリケーションの近代化に踏み切るための、もうひとつの後押しとなるものです。Synopsys Software Integrity Groupのシニアソフトウェアエンジニアリングマネージャーであるアロン・ムレイニック氏は、「今後は、レガシーシステムの重要なコンポーネントが耐用年数を迎えるか、既存のサポート契約の更新が忌まわしいほど高額になるかのどちらかが先に訪れる形となるでしょう」と述べています。

 

人材不足

高いコストに加え、レガシーシステムの保守や運用を行う人材不足も大きな問題点だとムレイニック氏は説明します。「多くの場合、レガシーシステムは少人数のベテラン技術者によって保守されており、そのうちの1人または複数が職を離れることになるとレガシーサポートチームは非常に小さくなり、もはやそれに依存することは非常に難しくなるのです」と、ムレイニック氏は話します。

まだキャリアが浅いSTEM業界のスペシャリストにとっては、市場をリードする最新技術の専門知識を得ることが非常に重要であり、企業における自分の価値を高められるスキルと経験を身につけられるポジションへの需要が高まります。そのため、レガシーシステムのような「時代遅れ」と捉えられるような技術に携わろうとする人は少なく、若手の代替要員を確保するのが難しい傾向にあります。

 

法規制

レガシーシステムを使い続けることに対するもう一つの問題点は、新たな法規制に関連しています。世界的に見ても、近年IT 関連の業務は国や業界からの規制を受けることが多くなっています。例えば、欧州や米国では、企業のガバナンス責任者は欧州のGDPR(一般データ保護規則)や米国のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などのデータ保護規制にIT条項が準拠していることを確認する必要があります。CapgeminiがCCPAの2019年に行った調査では、企業のIT担当役員に対し組織が直面する最大の課題について評価を求めたところ、42%がレガシーシステムを重要視していることが明らかになりました。また、Rackspaceが2021年に行った調査では、回答者の56%が、最新のアプリケーションへの刷新を遅らせた結果、新しい規制に対応できなくなったことがあると報告しています。

 

レガシーシステム脱却のポイント

以上で挙げられた問題は、世界的にもはっきりと浮き彫りになっており、ここ数年で企業へのDX推進が一層進んでいます。IDCの調査によると、組織が大規模のIT企業になることを目指しているため、全世界でのDX投資は2023年までに7兆1,000億ドルに達すると予想されています。日本においても、2021年8月より企業の経営戦略・デジタル戦略の一体的な実施を後押しするためDX投資促進税制が開始されました。

企業の視点から見た場合、以上のような問題点を持つレガシーシステムからの脱却を成功させるため、まず出来ることとは何でしょうか?

 

①具体的なメソッドとしては、モダナイゼーション・マイグレーション・クラウドサービス利用が主流

 

モダナイゼーション(現代化)

モダナイゼーションとは現代化を意味する言葉で、ITの分野においては、ソフトウェアや蓄積されたデータを活かしつつ最新の技術と組み合わせることで、システム基盤を刷新することが含まれます。新たなシステムを開発するよりも低コストで実行が可能となります。

 

具体的なモダナイゼーションの方法としては、

  • リホスト:アプリケーションやミドルウェアの設定はそのままでインフラを刷新する
  • リビルト:業務の流れや使い方をゼロベースで再構築する
  • リライト:既存のアプリケーションを新しい開発言語ツールに書き換える

等が含まれます。

 

マイグレーション(移行)

マイグレーションとは、移行を意味する言葉で、既存システムのソフトウェアやデータを活かすモダナイゼーションとは異なり、マイグレーションではシステムやデータを新環境へ移す方法を取ります。マイグレーションには、物理的なオンプレミス環境から、クラウド環境へのシステム移行するクラウドマイグレーションなどがあります。システム刷新にあたり業務への支障が少ないこと、段階的な移行が可能であることや、コストを抑えられるのがメリットです。

 

SaaSなどのクラウドサービスの活用

レガシーシステムの一部をクラウドサービスへ移行し、レガシーシステムの運用を止めるという手もあります。オンプレミス型のレガシーシステムとは異なり自社での保守運用が不要であるため、コストや人的リソースを削減できる点がメリットの一つです。

 

②現在・過去のレガシー技術チームの視点を取り入れる

BAE Systems Digital Intelligence社の元中央省庁コンサルタント、ローナ・リー氏は、「DX改革を始める際、新しいプラットフォームとわくわくさせるような新しい技術を取り入れための施策を考えることに重点が置かれます」と述べます。「しかし、そのためには現在もしくは過去のレガシーシステム設計チーム(もしくは担当者)からのガイダンスや彼らの視点を活用するべきでしょう」と続けます。

多くの企業ではレガシーサポートために創設されたDX推進チームのみでDXに関わる業務を行いますが、これはよくある落とし穴であるとリー氏は警告しています。これらのチームのみでは、レガシーシステムの使用方法、並行稼働の要件、廃棄に関する考慮事項、データ管理および転送に関する懸念事項など、重要な要因が見落とされてしまう可能性があります。

「レガシーシステムから完全にデジタル化されたシステムへの移行をタイムリーに成功させるためには、将来の設計と現在や過去のレガシー技術チームが協力し、両方の視点を取り入れつつ進める必要があります」とリー氏は述べています。

 

③レガシーシステム脱却のために必要な人材を採用する

DX推進は、必要な人材が協働しそれぞれの役割を果たすことで大きく前進します。独立行政法人情報処理機構(IPA)は、レガシーシステム脱却を主導するDX人材として、以下の職種を挙げています。

 

  • プロデューサー
  • ビジネスデザイナー
  • アーキテクト
  • データサイエンティスト
  • UXデザイナー
  • エンジニア・プログラマー

 

企業が競争力を高めるためには、可能な限り早くこれらのDX人材が活躍できる基盤を構築、必要な人材の採用を行い、レガシーシステムを刷新することが望まれます。しかし、DX人材は絶対数が不足しており企業間の奪い合いとなりつつあります。今後はDX人材の獲得と育成が企業成長のカギを握ると言っても過言ではないでしょう。

 

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レガシーシステム|まとめ

現在問題なく運用出来ていたとしても、レガシーシステムはいずれ企業にとって大きな足かせとなることは間違いありません。そして、レガシーシステム脱却に伴い、記事内でご紹介したような新たな人材の採用ニーズが予想されます。Computer Futuresでは、最新のIT技術に関わるプロフェッショナルの採用と転職のサポートを長年にわたり行って参りました。採用に関するご相談等、お気軽にお受けいたしますので、ご興味がございましたら以下のフォームよりお問い合わせください。

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