
世界的に増加傾向にあるフリーランスワーカー。新型コロナウイルス感染症の拡大以降さらに、その自由で柔軟な働き方に注目が集まっています。フリーランスになるには開業手続きや必要書類の準備など、知っておかなければならない事項が多々あります。自由な働き方である分新たな責任も生じますし、「フリーランスとして働くことに興味はあるけれど、実際に何から始めればよいのか分からない」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、フリーランスの定義や個人事業主との違い、IT業界でフリーランスとしてのキャリアを始める前にするべき準備や実際にフリーランスになった後にするべき7つのこと、そして最適な独立のタイミングについてご紹介します。
フリーランスとは?独立するメリットとデメリット
フリーランスとは、企業には所属せず、クライアントやプロジェクトごとに契約を結んで仕事をする働き方です。フリーランスになる主なメリットとしては、自由度が高いことが真っ先に挙げられ、場所や時間に関してだけでなく、経験次第では仕事内容にもある程度選択の自由があります。また、フリーランスエンジニアの場合、平均年収が正社員として働いた場合よりも高い傾向にあり、優秀なフリーランスエンジニアの方では年収1,000万円を超えることもあります。
こちらの記事では、ITフリーランサーとして働くメリット5つを詳しくご紹介しております。
一方で、ご自身の成果・実力やクライアントとの交渉力次第で業務量とそれに伴う収入も左右されるということ、スキル向上のために自身で勉強の機会を作っていかなければならないということは、フリーランスならではの課題となるでしょう。また、フリーランスは労働基準法などの労働法規が適用されないので、「最低賃金」「労働時間」「有給休暇」「休日」「労働災害での保障」などの規定の対象外となることにも注意が必要です。
フリーランスと個人事業主の違いとは
フリーランスと似たような言葉に「個人事業主」があります。個人事業主とは「その事業を法人ではなく個人で行うものとして税務署に開業届を出している人」のことで、この名称は税務上の所得区分として使用されます。フリーランスは個人で契約を結んで自由に仕事をする働き方そのもののことを表すため、言い換えれば個人で仕事を請け負うフリーランスの場合、個人事業主に該当するケースがあるということになります。
フリーランスになるには?事前にやっておいた方が良いこと8選
1. キャリアプランを明確にする
フリーランスになるにあたり、しっかりとしたキャリアプランを立てることは、非常に大切です。働き方が変われば生活基盤やご自身、そしてご家族の生活にも変化が生じます。会社員を辞めてフリーランスになるからには、ネガティブな理由ではなく、フリーランスになることが働き方としてベストかどうかを考慮して決められると良いでしょう。
フリーランスとして働きたいと考えるタイミングの一つに、ワークライフバランスを向上させたい時が挙げられます。「お子様との時間を増やしたい」「家族の介護をしたい」などといった理由も多く見られます。また、自分のスキルをより活かすためにフリーランスへの転換を望む場合もあるでしょう。ご自身の理想のワークライフバランスやキャリアプランを見直した上で、フリーランスとして働く意義があることを再確認しましょう。また、その際には、今後の生活に必要なお金、生活レベルをどの程度に保つべきかを明確にしておきましょう。

こちらの記事ではエンジニアがキャリアプランを設計する必要性や、キャリアプランの設計ステップ、キャリアプラン例、キャリアプランを考える際のポイントについて解説しています。
記事を読む
2. ビジネスプランを考える
フリーランスとして働く意義が確認出来たら、次にフリーランスとして受注する仕事内容やブランディングについて考えましょう。ご自身の強み、USP(ユニーク・セリング・ポイント)は何かを明確に把握し、「ご自身のやりたいこと」と「需要があること」のバランスを取って仕事内容を考えましょう。また、会社員を辞めるとなった際に、大きな懸念事項となるのが収入ではないでしょうか。案件ごとの給与や皆様がお持ちのスキルで得られることのできる額を調べるためにも、業務委託として募集されている案件を調査してみることをお勧めします。Computer Futuresでもご相談に乗っておりますので、お気軽にご相談ください。
いきなり独立することへの不安がある場合は、現在お勤めの会社の規定次第ですが、まずは副業として始めてみるのも一つの手です。これによって、業務時間と給与の大体の感覚をつかむことができます。仕事内容が概ね定まったら、顧客は誰か、収益モデルは何かについても考えましょう。長期的なビジネスのゴールと1年後までに達成したい短期的なゴールを設定することも大切です。
3. 事務用口座の開設
会社員と違い、フリーランスはご自身で全てのお金を管理する必要があります。お金の管理には会計ソフトを使用するのが最も一般的ですが、入力の際には明細を見ながら行うことになります。作業を楽にするためにもプライベート用の口座とは別に新しい口座をなるべく早く用意しておくことをおすすめします。
4. 会計ソフトの導入
前述の通り、会計ソフトの導入も必要となります。人気のあるものとしては「弥生」「freee」などが挙げられます。ご自身で使いやすそうなソフトを選んで試してみるなど、初めての確定申告で慌てないためにも、早いうちからしっかりと準備しておきましょう。
5. ウェブサイトや事業用メールアドレスの作成
近年では名刺を使う機会がずいぶんと減ったかもしれませんが、代わりのブランディングツールとしてウェブサイトの構築が当たり前となりました。ウェブサイトやポートフォリオを利用することで、少額の投資でターゲットとする顧客へ効率良くリーチすることができますし、フリーランサーとしての信頼性を高めることにも繋がります。ウェブサイトやポートフォリオの作成と共に、仕事を受注する際の窓口、受注した後の連絡手段としても利用するためのメールアドレスも準備しましょう。
6. 職務経歴書やLinkedInプロフィールをアップデートする
独立する際も基本的には新たな仕事を見つけることになりますので、皆様の職務経歴書(CV)やLinkedInプロフィールを最新の、そしてご自身の経歴やスキル、強みをアピールできるものにアップデートすることから始めましょう。優れたLinkedInプロフィールを作ることができれば、企業の採用担当者やリクルーターの目に留まり案件を提示してもらえることもあります。
個人事業主として仕事をする場合、プロフィールは皆様のパーソナルブランディングにおいて非常に重要な役割を果たすものとなります。LinkedInをはじめとするその他のソーシャルメディアプラットフォームも活用し、ご自身が活かしたいスキルやキャリアパスを明確に打ち出すことを心がけましょう。
7. 契約書や請求書などの雛形の作成
フリーランスとして活動する際、請求書や見積書の作成は必須になります。あらかじめご自身が使いやすいテンプレートを作成しておくことで、このような事務作業をスムーズに行うことができます。インターネット上でも無料で見つけることができますので、これらを自分用にカスタマイズしておくと良いでしょう。
8. 番外編: クレジットカードの作成・ローンの申請
フリーランスになると、会社員や公務員時代と比べクレジットカードやローンの審査が通りにくくなることが予想されます。これは、収入が不安定なフリーランスは安定した収入を得ている人と比較して、統計的に支払いが滞る可能性、また貸し出したお金を回収出来なくなるリスクが高いと判断されるためです。特にフリーランス一年目から安定して高収入を得られる保証はないため、クレジットカードとローンの申請を会社に所属している間に済ませてしまうことをおすすめします。
フリーランスになったらすぐにするべき7つのこと
1. 社会保険に関する手続き
フリーランスとして独立した場合、社会保険への加入方法は3つあります。まず1つ目は国民健康保険に加入する方法で、退職後14日以内に厚生年金から国民健康保険に切り替える手続きが必要となります。お住いの市区町村や年度によって保険料は異なるので、お住いの市区町村役場にご相談ください。手続きを行う窓口も市区町村役場で、その際には以下の持ち物が必要となります。
- 年金手帳
- 免許証などの身分証明書
- 厚生年金など退職の日付が分かるもの
- 印鑑
2つ目の健康保険として、会社の健康保険を任意継続する方法が挙げられ、継続加入することで退職後2年間まで現在の保険給付内容を変わらず受け取ることができます。保険料に関しては会社に所属時は原則会社が半額負担してくれますが、退職後は全額自己負担となるので注意しましょう。国民健康保険に加入した場合と、会社の健康保険を任意継続した場合の金額を比較して、安い方に加入しておくということで問題ないでしょう。
また、WebデザインやWebサイトの制作などをしている方は「文芸美術国民健康保険」に加入するという手もあります。加入には過去の作品の提出が必須ですが、2022年2月現在、保険料は所得金額に関係なく組合員一人あたり月額21,1000円、ご家族一人あたり月額11,600円と固定なので、安心して支払いでき保険料支払い額が大幅に軽減できる場合があります。満40歳~64歳以上の被保険者は、一人当たり月額5,200円の介護保険料が追加されます。
2. 個人事業の開業届の提出
フリーランサーとして独立後、一か月以内に税務署に提出することが義務付けられています。手続きの際には、印鑑と免許証などの身分証明書を忘れずに。
3. 青色申告承認申請書の提出
フリーランサーとして独立した後、2か月以内に青色申告承認申請書の提出が必要となります。個人事業の開業届と同様、印鑑と免許証などの身分証明書が必要となり、こちらも届け先が税務署なので、開業届と併せて提出すると良いでしょう。
4. 将来の備えをする(年金など)
フリーランスになると、将来貰える年金の金額が少なくなります。このため、退職するまでに貯蓄したい額に応じてご自身で備えておくことが必須となります。フリーランスとしての年金の積み立ては、様々な方法で行うことができます。
フリーランスとして働く場合、国民年金に加入することとなり、収入等に関係なく月額で同一の金額を納める必要があります。(金額は年度ごとに変動します)。20歳~60歳未満の方に加入義務があるので、退職から14日以内に手続きを行いましょう。また、国民年金だけではなく、以下の制度を利用して将来の備えをすると良いでしょう。
- 国民年金基金 ― 公的年金の一つで、個人事業主やフリーランスが加入できる、終身年金です。将来貰える金額は決まっており、加入すると原則として自己都合によりやめられませんが、掛金の額を自由に増減することができ、掛金は全額所得控除されるというメリットもあります。
- 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)― 掛金を自由に決め、ご自身で積み立てる個人年金です。証券会社や保険会社などから申し込み可能で、5,000円~68,000円まで1,000円単位で自由に掛金を設定できます。こちらも掛金は全額所得控除され、原則60歳から老齢給付金として受け取ることができます。注意するべきこととしては、金融商品のため運営リスクがあり、将来貰える額が変わる可能性がある点でしょう。
- 付加年金 ― 公的年金の一つで、月額400円の支払いで無理なく将来貰える年金に上乗せができる制度です。確定申告なので毎年受給時には「200円×付加保険料を納付した月数」の金額が加算されます。国民年金基金との併用が出来ないので、まず負担なく将来の備えをしたいいう方には付加年金の利用から始めてみると良いかもしれません。
5. フリーランスになったことを周りに知らせる
ソーシャルメディアやクラウドソーシング用プラットフォーム(クラウドワークスやランサーズなど)を活用して、「フリーランスになりました」「案件を探しています」といった趣旨の発信をしていくことは、お仕事の相談を増やすためにも大切なことです。また、転職エージェント等にもフリーランスとなったことをお知らせることで、案件紹介の連絡をもらえることがあるかもしれません。
6. コミュニティへ参加してネットワークを広げる
前述のポイントとも類似していますが、より多く仕事の案件を得るためにも、コミュニティの参加をおすすめしています。フリーランス2020によると、フリーランスとして働いている方の73.8%が、仕事の受注経路として「人脈(知人による紹介を含む)」と回答しています。そのため、会社員として働いている間にも同じ業界や似たような業種に携わる方々とのつながりを築き、コミュニティへと参加しておくことで、その後のキャリアにおける大きな財産となり得ます。以下の記事もぜひご参照ください。
7. エージェントに登録や相談をする
先述のように人脈を活用して案件を探すのと同時に、Computer Futuresのようなコントラクトリクルーティングにおいて強みを持つエージェントを活用することで、効率よくご自身の希望に沿った案件を見つけることができます。弊社では外資系企業におけるハイクラス案件も数多くご紹介しており、世界中では38分に1件のペースでの案件のご紹介を成功させています。皆様のご要望を以下のフォームからお聞かせいただくか、以下のボタンからCVをアップロードいただきご登録をお願いいたします。
フリーランスになるために最適な独立のタイミングとは?
正社員からフリーランスとして独立するタイミングに正解はありません。ただ、フリーランスとして成功したいと考えた際に鍵となるのが、仕事自体のスキルだけでなく、「仕事を得るスキル・人脈があるかどうか」という部分です。このあたりがまだ十分でないと感じるのであれば、今の職場もしくは転職によりまずは環境を変え自分自身のスキルを高め、人脈を広げる必要があると言えるでしょう。逆にフリーランスとして独立しても仕事を継続できるくらいのスキルや人脈があるのであれば、フリーランスになるベストなタイミングためのベストなタイミングの正解はありません。とは言え、最適なフリーランスへの転換時期を決める上での判断軸がいくつかあります。
- 半年から一年間生活できるだけの生活費が貯蓄されている
- 仕事を受注できる経路が確保されている
- 健康上の大きな問題がない
- 家族の理解を得られている
- 今の職場に迷惑が掛からない
- 必要な手続きや今後のキャリアプランについて明確である
- コミュニケーション能力、自己管理能力、営業力などのソフトスキルを持っている、または伸ばしている。(こちらの記事では、企業がフリーランスとの契約を結ぶ際に重視する、技術的なスキルや経験以外のソフトスキルをご紹介しています)。
また、生涯年収の観点で言うと、フリーランスになることで一番恩恵を受けられるのは20代と言われています。Computer Futuresではフリーランス向けの業務委託案件も取り扱っており、フリーランスに関するご相談もお受付しております。「フリーランスへの転向に興味があるけれどまだ不安がある」という方は、是非記事下のフォームよりお気軽にご相談くださいませ。
フリーランスに向いているリモートワーク可能なエンジニア職とは?
「在宅エンジニアの求人を探すには?リモートワーク向きの職種や言語もご紹介」の記事でもご紹介したように、エンジニア関連職の中には、リモートワークなど自由な働き方を持つフリーランスを目指す方に、特におすすめの職種があります。
- Webエンジニア:Webサイト上で動作するサービスを構築するWebエンジニア。
- アプリエンジニア(iOSエンジニア・Androidエンジニア):スマートフォンに搭載するアプリを開発するエンジニア。
- フロントエンドエンジニア:Webサービスやアプリを開発するエンジニアのうち、ユーザーに近いフロントエンドの処理を担当するエンジニア。
- バックエンドエンジニア:Webサービスやアプリを開発するエンジニアのうち、サーバー側の処理部分を設計・開発するエンジニア。
- プログラマー:ジャンルを問わず、エンジニアから依頼されてプログラムを作成する職種。
パソコンとインターネット環境のみで業務が可能な職種、また単独作業が多い職種が、リモートワーク可能なフリーランス案件として多数募集されています。
フリーランサーとして働くことをお考えですか?
記事内でもご紹介したように、フリーランサーとして働くために最適なタイミングは人それぞれであり、明確な正解はありません。今すぐに独立する予定がなくても、フリーランスとしてどのような案件があり、それぞれの案件でどの程度の年収や月収が確保できるのか、事前にリサーチしておくことで、今後の選択肢としての現実味が帯びてくるかもしれません。今後会社から独立してフリーランスや個人事業主としてのキャリアを築くことに、現在少しでもご興味がございましたら、ページ下部のフォームからComputer Futuresにご相談ください。皆様のご経歴やスキルに基づいてご紹介可能な案件をご提案させていただきます。