
デジタル技術によりビジネスが変革する中、情報セキュリティの重要性は日に日に増していますが、その中でも特に今注目を浴びているのがクラウド環境におけるセキュリティ問題です。パロアルトネットワークスがクラウドサービスプロバイダーを利用する1300以上の組織を対象に行った調査の報告書「Unit 42 クラウド脅威レポート 2023」によると、日本国内でクラウドへの投資額が1億ドルを超える組織は約65%を超えていますが、これらの組織の77%は必要なセキュリティソリューションを特定することに対し課題を抱いているという結果が出ています。
このようにクラウド環境でのセキュリティへの投資や課題が増えていくに伴い、この分野での知識や経験を持つクラウドセキュリティ人材へのニーズも急激に高まっています。今回の記事では、この機会にこの分野への転職を叶えたいとお考えのITプロフェッショナルに向けて、クラウドセキュリティ分野における職種の選択肢と、転職を成功させるためのコツについて解説します。
目次
クラウドセキュリティ人材とは
クラウドセキュリティ人材とは、クラウドやクラウドセキュリティに関する知識を持ち、クラウドコンピューティング環境、クラウドで実行されるアプリケーション、そしてクラウドに保存されているデータを保護する人材のことを指します。現在、クラウドセキュリティに対応できる人材は、スキル的にもその数的にも世界的に不足しており、増加するクラウドサービスへのサイバー攻撃に対応するためにも、早急な対応が必要です。
クラウドセキュリティの知識を持っているものの実務やマネジメントのレベルにまで達していない人材も多く、企業では、経営やリスクマネジメントを包括する部署の人材がクラウドセキュリティに関する知識を取得することや、より積極的にセキュリティ人材の採用活動を行うことが求められています。
クラウドセキュリティに関わる具体的な職種としては、クラウドエンジニアやセキュリティエンジニア、DevOpsエンジニア、セキュリティアナリストなどが挙げられます。各職種について、以下で詳しくご紹介します。
クラウドエンジニア
クラウドエンジニアは、クラウドの設計・構築・保守・運用を行う職種です。クラウドセキュリティだけでなく、システムの設計から担当することになるため幅広い知識が必要です。また、クラウドエンジニアは、クラウドを利用した企業のコストや運用のリソース削減など、目に見える形で経営の効率化に貢献できますし、常に最新の技術に関わることができることからも、IT業界における人気の転職先職種の一つとなっています。

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セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアとは、情報セキュリティついて高い専門性を持ち、セキュリティに配慮したシステムの設計や構築、運用を担当する職種です。企業からの依頼の要件を確認し、セキュリティシステムを検討したうえで、ネットワークや使用する機器、運用形態に対応した設計と実装を行っていきます。非常に需要の高い職種であり、上流工程に携わりコンサルティングを行うスキルまで身に着けた場合、さらに市場価値の高い技術者として評価されるようになります。
セキュリティエンジニアが担当する分野は非常に幅広く、企業やポジションにより異なりますので、クラウドセキュリティのシステムに携わりたい場合には応募する際に確認する必要があります。

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セキュリティアナリスト
セキュリティアナリストは、膨大なインターネット接続のセッションやログを分析することで組織のシステムを監視し、インシデントやトラブル発生時にその攻撃手法や攻撃元などの分析を行うことを主な役割としています。安全なシステム運用を実現するためのシステム構築に必要なデータの分析や、サイバー攻撃を受けた場合の復旧や今後のセキュリティ方法に関する提案するために欠かせない職種です。この職種もクラウド以外のセキュリティを担当するケースが多いため、クラウドを専門に担当したい場合には応募時に確認する必要があります。
DevOpsエンジニア
DevOpsとは開発(Development)と運用(Operation)、そして品質管理を連携し同一のプロセスとして扱う考え方を指し、開発者と運用者の中間に立つ、もしくは統括的な立場で改善策を提案、実行するエンジニアのことをDevOpsエンジニアと呼びます。具体的にはCI(継続的デリバリー:開発からテストまでのプロセスを自動化し短期間で品質を担保すること)やCD(継続的インテグレーション:システムが常に最新・最善の状態にあるように運用すること)、システムやアプリケーションのリソース管理、ライブラリ管理の他にセキュリティアップデートチェックや適用などを含めたセキュリティ管理も担当します。
DevOpsエンジニアと似た職種にインフラエンジニアがありますが、こちらもクラウドのセキュリティ管理に関わることが出来る職種です。DevOpsエンジニアもインフラエンジニアも、企業や案件により担当する領域が異なりますので、クラウドのセキュリティ管理に関わることができるポジションか事前に確認するようにしましょう。

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インフラエンジニアへの転職に役立つ資格・スキルとは
記事を読むここで挙げたポジション以外にも、「クラウドインフラストラクチャエンジニア」や「クラウドセキュリティ認証対応」などの異なる名前で募集されているポジションもありますので、クラウドセキュリティに関わる仕事をお探しの場合はまずはオンラインでリサーチしてみる、もしくは転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
セキュリティ人材採用のトレンド
世界最大のサイバーセキュリティ専門家資格の非営利団体である(ISC)²は、2022年にAPAC(アジア太平洋地域)のサイバーセキュリティ人材の採用責任者を対象とした調査レポート「Cybersecurity Hiring Managers Guide – Asia-Pacific Edition(英語)」を発表しました。その調査レポートでは、以下のような結果が明らかになっています。
- 日本はAPAC諸国の中で、学歴のみを参考に採用するケースが少なく、IT実務経験をより重視すると回答。
- 回答者の64%が業界未経験者もしくはジュニアレベルの人材を採用する際に、過去の職務経歴を最も重視すると回答。56%が技術スキル、51%が認定資格と回答。
- 回答者の62%が実務経験はないもののITやサイバーセキュリティ分野における知識を独学で身につけた候補者を採用した経験があると回答。
- 回答者の39%(日本では33%)が人材紹介会社を通して人材を発掘、採用したと回答。
クラウドセキュリティ分野への転職を成功させるためのコツ
以上の採用傾向を踏まえ、以下、クラウドセキュリティ分野における理想のポジションを得るためのポイントをまとめました。
資格を取得する
クラウドセキュリティに関わる上記の職種は基本的に資格の取得は必須ではありません。しかし、上述の調査結果からもわかるように、特に未経験からこの分野への転職を試みる場合、興味がある分野もしくは業務で使用したい分野に関する資格を取得することで面接の際のアピール材料になる可能性があります。
クラウドセキュリティ分野への転職に役立つ資格
- 情報処理安全確保支援士
- (ISC)²資格
- CISA(公認情報システム監査人)
- CISM(セキュリティマネージャー)
- GIAC認定試験
- システム監査技術者
- CompTIA Security+
- AWS認定DevOps Engineer Professional (DOP)
- Microsoft資格 Azure DevOps Engineer Expert
- Google Cloud 認定資格 Professional Cloud DevOps Engineer
以下の記事では、これらの資格の中でも特に現在取得することによるメリットが期待できる、おすすめのクラウドセキュリティ関連資格について詳しく解説しています。

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スタートアップに転職し集中的なスキルアップを目指す
スタートアップでは、個人の仕事の裁量が大きく、幅広いタスクに携わることができます。また、経営者と従業員との距離が近く実力主義である環境で経験を積むことで、短期間での大幅なスキルアップを目指すことも可能です。
前述の「Cybersecurity Hiring Managers Guide – Asia-Pacific Edition」の調査結果からは独学でクラウドセキュリティに関する知識を学んで転職に活かすことも可能であることが分かりますが、やはり独学でマスターするのは決して簡単ではありません。まずは比較的ハードルが低いスタートアップへの転職から、この領域におけるキャリアをスタートさせてみることも一つの手です。

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コミュニティに参加し、当領域内でのネットワークを広げる
コミュニティに参加し、同じような興味を持つ人々、その領域におけるプロフェッショナルやリクルーターとのネットワークを築き、情報交換を行うこともおすすめです。また、これらの方法で築かれたコネクションからいつポジションの紹介を受けるか分かりませんし、独学でスキルアップを狙っている場合、勉強のコツや有益なリソースなどの情報を得られる可能性があります。LinkedInやTwitter、Facebookなどのソーシャルメディアでご自身の興味のある分野の名前やハッシュタグを利用し、同じような興味を持つグループや人々と繋がってみるも良し、MeetupやConnpass, eventbrite, Peatixなどのイベントプラットフォームで関連したイベントを探し参加してみるのも良し、コミュニティに参加する方法は様々です。今後のキャリアアップのためにも、積極的にネットワークを広げられる場に顔を出してみることをおすすめします。
Computer Futuresでも、サイバーセキュリティ領域における転職と採用のサポートを行う中で築いてきたグローバルなネットワークを活かし、サイバーセキュリティ領域で活躍される皆様に向けたウェビナーやMeet up開催の他、業界イベントへのスポンサーなどを通じて得た東京のサイバーセキュリティシーンの最新動向や知見を基に、皆様の採用活動および転職活動のサポートを提供しております。
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