
近年、情報技術の発達に伴い不正アクセスやデータ改ざん、遠隔操作などのサイバー犯罪の数が急増しています。そのための対策として、サイバー空間においては証拠の保全と分析に力を入れていくべきであるという考えが浸透してきています。このデジタル社会における証拠の保全と分析をデジタルフォレンジックと呼びます。今回は、デジタルフォレンジックの基本情報と、デジタルフォレンジックに携わるために必要なスキルと資格、そして未経験から転職するためのコツについて詳しく解説します。
目次
- デジタルフォレンジックとは?
- デジタルフォレンジックに関わる職種
- デジタルフォレンジックに必要な知識
- デジタルフォレンジックの年収
- デジタルフォレンジック関連の資格
- 未経験でデジタルフォレンジックになるためには?
- デジタルフォレンジックの将来性
以下の記事では、今注目のサイバーセキュリティ領域におけるキャリアの積み方、そして注目の職種と必要な知識やスキルについて解説しています。

サイバーセキュリティ業界におけるキャリアの歩み方【5つの職種と必要なスキルも徹底解説】
記事を読むデジタルフォレンジックとは?
「フォレンジック」とは、「法廷」「科学調査」といった意味を持っており、サイバーセキュリティにおけるデジタルフォレンジックとは、インシデントレスポンスや法的紛争、訴訟に際し、犯罪の立証のための電磁的記録の解析や手続きを行う一連の科学的調査手法と技術を指します。デジタルフォレンジックは、大きく分けて3つの種類に分類されます。
- コンピューターフォレンジック・・・犯罪行為に使われたと疑われるコンピューターの本体を押収し、ハードディスクに残された痕跡を調査・解析
- モバイルデバイスフォレンジック・・・スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を対象とした鑑識
- ネットワークフォレンジック・・・ネットワーク上でデータがどのように流れたかを解析、不正アクセスや情報漏洩などの証拠を保全
デジタルフォレンジックのプロセス
デジタルフォレンジックの具体的な手法や流れとしては、「情報の収集と保全」「証拠の復元と解析」「レポートの作成と活用」の三つに分類されます。
デジタルフォレンジックは、まず分析の対象となるコンピューター内にあるデータを保全し、証拠の収集や原因究明の調査に影響が出ないように徹底した管理を行うところから始まります。そして、データを解析し、どのような経緯でデバイスの操作があったのか、証拠の発見を目指します。その後、データの復元や解析によって得られた情報をレポートとしてまとめ、これらは法廷での証拠として活用されます。
デジタルフォレンジックに関わる職種
デジタルフォレンジックを行う職種は、フォレンジックエンジニア、デジタルフォレンジック、もしくは電子鑑識などと呼ばれます(この記事内ではデジタルフォレンジックと呼んでいます)。デジタルフォレンジックは、主に大手企業やサイバーセキュリティベンダーでの採用が活発に行われています。
以下、デジタルフォレンジックに必要な知識や経験、年収について詳しく見ていきます。
デジタルフォレンジックに必要な知識
デジタルフォレンジックに必要な主な知識としては、以下が挙げられます。
- 情報セキュリティに関する知識
- コンピューターやネットワークに関する知識
- 法的手続きに関する知識
デジタルフォレンジックとして活躍するためには、サイバー攻撃を受けた際の初動調査を迅速に行うための情報セキュリティやネットワークに関する知識や、それに関連した経験が必要となります。その理由として、企業が外部から悪意あるサイバー攻撃を受けた際に、早急にデータの保全を行えるよう、「どのような攻撃をどのように受けたのか」、そして「結果としてどのような損害を被ったのか」などの攻撃と被害の詳細を直ちに認識することが非常に重要であることが挙げられます。
デジタルフォレンジックの年収
デジタルフォレンジックは比較的新しい職種であるため、平均年収に関する情報はあまり見かけられません。ただ、求人の相場の多くは600~1000万円となっており、企業によっては1500万円以上のものも見かけられます。以下の給与ガイドでは、デジタルフォレンジックを含むサイバーセキュリティ領域における平均年収をご紹介しています。ダウンロードは無料ですので、是非お気軽にご活用ください。

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デジタルフォレンジック関連の資格
現在日本で認定されているデジタルフォレンジック関連の資格としては、デジタルフォレンジック・プロフェッショナル認定(CDFP)があります。その他にも、情報セキュリティの先進国であるアメリカでは下記のような資格が存在しており、国際的にも認められています。
- Global Information Assurance Certification (GIAC)
- Certified Computer Examiner (CCE)
以下、それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。
デジタルフォレンジック・プロフェッショナル認定(CDFP)
デジタルフォレンジック・プロフェッショナル認定(CDFP)は、デジタルフォレンジック協会が実施している、日本初のデジタルフォレンジックに特化した試験です。合格点や合格率は非公開であり、未だ試験に関する情報量は限られていますが、網羅的かつ質の高い試験内容として日本におけるデジタルフォレンジック従事者、もしくはデジタルフォレンジックへの転職を目指す方にはおすすめの資格となっています。
公式ホームページ:https://digitalforensic.jp/home/act/cdfp/
Global Information Assurance Certification (GIAC)
Global Information Assurance Certification (GIAC)は、SANSが実施する資格試験で、取得することで実務的に実用するセキュリティの知識とスキルを証明することができます。主に、セキュリティ監査、侵入検知、インシデント・ハンドリング、デジタルフォレンジック、ファイアウォールに関して、入門レベルから高度な専門性を要求される分野まで全てをカバーしています。
また、GIACにはデジタルフォレンジックの各分野に対応した様々な資格が提供されており、資格を取得することで自分がどの分野を得意としているのかを示すことができる利点があります。
公式ホームページ:https://www.sans-japan.jp/giac
Certified Computer Examiner (CCE)
Certified Computer Examiner (CCE)は、ISFCE(International Society of Forensic Computer Examiners)という団体が2003年から提供している比較的歴史のある資格で、アメリカでは広く知られています。試験は筆記試験と実技で構成されており、取得することでデジタルフォレンジックに関する高度な知識とスキルを持っていることを証明できます。
公式ホームページ:https://www.isfce.com/certification.htm(英語サイト)
その他にも、以下のような資格を取得することで、ネットワークやサーバー、情報セキュリティに関する基本的な知識とスキルを証明することができ、デジタルフォレンジックへの転職に有利に働く可能性もあります。
それぞれの資格に関する難易度や試験問題に関する詳細、今注目の資格については、以下の記事で詳しく解説しています。

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未経験でデジタルフォレンジックになるためには?
サイバーセキュリティ業界未経験からデジタルフォレンジックへの転職を目指す場合の一番の近道としては、まずは情報セキュリティを専門的に学ぶことができる大学や専門学校に進学し、体系的にデジタルフォレンジックやサイバーセキュリティについて習得していくことでしょう。もしくは、まずシステムエンジニアやネットワークエンジニアとしての経験を積んだ後、足りないセキュリティ関連の知識を独学で習得して転職することも可能となります。その際には上記のようなセキュリティ関連の資格の取得を目指してみることで、よりスムーズな転職が叶うかもしれません。
近年では、日本国内におけるデジタルフォレンジックの普及に伴い、公的機関だけでなく民間企業の専門家が自社サービスとしてデジタルフォレンジックを行うケースも増えてきています。これに伴い、様々な企業において積極的な採用が行われています。デジタルフォレンジックに必要な知識を習得することで、職種未経験であっても高度なセキュリティ人材として認められ、デジタルフォレンジック業務に携わることができる可能性がありますし、企業の不正調査に関わることもできる有益な人材として重宝されるでしょう。
デジタルフォレンジックの将来性
情報セキュリティ先進国であるアメリカでは一昔前から存在するデジタルフォレンジックですが、日本においても今後多くの企業で必要不可欠な存在になると予想されています。これは、IoTやビッグデータなどの新技術により、個人情報をはじめとする顧客情報や機密情報を扱う企業が増えており、これに伴いサイバー攻撃も急増していることに起因しています。また、近年では企業向けのサイバーセキュリティに関連した保険商品も登場しており、その保険に適応するためにはデジタルフォレンジックを設置することが必須となるため、これもデジタルフォレンジックの需要増加に拍車をかける理由となっています。
デジタルフォレンジックなど、情報セキュリティに知識や経験を活用したキャリアアップをご検討中の方は、まず転職エージェントに相談してみることをおすすめします。Computer Futuresではサイバーセキュリティ分野のポジションを数多くご紹介可能です。また、業界の展望や他業界との比較など、各種ご相談も随時受け付けております。サイバーセキュリティ領域におけるキャリアアップの機会をお探しの方は以下のフォームからお問い合わせください。
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