
企業が抱える情報は、常に外部からの攻撃や情報漏洩などのリスクにさらされています。情報という経営資産を守ることは今や企業にとって必須の経営課題であり、この情報セキュリティを担うのがセキュリティエンジニアです。
本記事では、セキュリティエンジニアの年収や将来性など、転職する前に知っておくと役立つポイントを解説します。
目次
- セキュリティエンジニアとは?
- セキュリティエンジニアの主な仕事内容
- セキュリティエンジニアの平均年収
- セキュリティエンジニアの将来性・需要
- セキュリティエンジニアに求められるスキル
- セキュリティエンジニアの資格
- セキュリティエンジニアのキャリアパス
- セキュリティエンジニアに転職するには
- セキュリティエンジニアへの転職を成功させるには
セキュリティエンジニアとは?
セキュリティエンジニアとは、社内の情報資産を守るプロです。社内システムの設計・構築・運用において、主にサーバーやネットワークなどのシステムのセキュリティ管理を専門とし、サイバー攻撃や情報インシデントを防ぐための対策から実行、問題が発生した際の調査および対処を行います。技術はもちろん、最新のセキュリティ事情やサイバー攻撃の手口についての情報収集が欠かせない職種です。
セキュリティエンジニアの主な仕事内容

セキュリティエンジニアの仕事は、「企画」「設計」「開発・実装」「テスト」「保守・運用」の5つに大きく分けられます。
企業の規模や個人のスキルに応じ、システム会社を交えて1人で企画・設計を中心に全工程を取りまとめる場合もあれば、他のエンジニアと分担して1つの工程を専門で担当する場合もあります。どちらの場合も、各工程の仕事内容を理解しておくことが重要です。以下では各工程について説明します。
企画
セキュリティ課題を定義し、これを解決するシステムを企画・提案します。この工程に特化したエンジニアはセキュリティコンサルタントと呼ばれることが多いです。セキュリティ面の脆弱性診断や評価もこの工程で行うことがあります。
設計
企画内容に基づいて、保守・運用まで見据えたシステムの設計を行います。サーバーやネットワークのセキュリティはもちろん、OSやハードウェアなどの運用方法まで総合的に考慮する必要があります。
開発・実装
設計内容に基づいてシステムを開発・実装します。システム構築のためのプログラミングはもちろん、ネットワークやハードウェアの導入・設定、クラウドの構築など、幅広い作業分野においてセキュリティに特化した開発スキルが求められます。
テスト
システムのセキュリティ要件が達成できているか検証します。想定した外部からの攻撃を再現してシステムを攻撃したり実装内容を確認したりして、業務で運用した場合のセキュリティリスクがないか綿密に調査する工程です。ここで行うセキュリティ調査は脆弱性診断と呼ばれ、この工程を専門的に扱うエンジニアもいます。
保守・運用
システムを導入した後、想定通りの運用ができているか、障害が発生しないかなどをモニタリングします。継続的なシステムのアップデートや定期的なセキュリティテストを実行し、システムの安全性を保証するのが仕事です。セキュリティ事象が発生した場合は原因究明のうえ対処し、システムや情報資産を守る必要があります。
数ある工程の中でも、この保守・運用は未経験から転職する場合でも比較的挑戦しやすい分野で、保守・運用からセキュリティエンジニアとしてのキャリアを積み上げていく人も多くいます。
セキュリティエンジニアの平均年収
セキュリティエンジニアの平均年収は、ITエンジニア全体の平均年収よりもやや高いとされています。
ただし、年収は経験やスキルによって幅があり、新卒や未経験などポテンシャル採用の場合は300万円台の場合もありますし、専門性がある場合や管理職採用の場合は年収1000万円以上も十分見込めます。業界の年収水準によっても年収が前後し、金融業界や保険業界、外資系企業などは比較的給与水準が高くなる傾向にあるでしょう。
当社がまとめた、以下の最新の給与調査では各セキュリティ関連ポジションの給与水準をまとめています。詳しくはダウンロードしてご覧くださいませ。

【2023年最新】IT・テクノロジー分野の給与水準ガイド
ガイドを見るセキュリティエンジニアの将来性・需要

セキュリティという分野は幅広い知識と専門性、経験、スキルが求められるうえ、最新の技術を学び続ける必要のある難易度の高い職種です。
2018年に総務省が発表した資料「我が国のサイバーセキュリティ人材の現状について」内のデータによると、2016年時点で情報セキュリティ人材は13.2万人不足しており、その不足数は年間1万人を超えるペースで増えると見込まれています。中小企業においては人材不足がさらに深刻とされています。このことから、セキュリティエンジニアになれる専門性を備えた人材は転職市場では希少な存在だと言えます。
出典:「我が国のサイバーセキュリティ人材の現状について」(総務省)
一方、情報セキュリティはどんな企業においても重要な経営課題です。サイバー攻撃の手口は年々高度化し、情報漏洩のリスクも高まる中、セキュリティに特化した人材を欲しがる企業は増えています。
コロナ禍を経てリモートワークが定着しつつある現在、セキュリティ課題の緊急性は増しているため、セキュリティエンジニアは今後も需要の増加が見込まれます。
セキュリティエンジニアに求められるスキル
一般的には転職難易度が高いとされているセキュリティエンジニアは、専門性と幅広いスキル・経験が同時に求められます。情報処理推進機構(IPA)では、情報セキュリティに携わる人材が備えるべき16の技術や知識について紹介されていますが、企画・設計などのマネジメント分野、開発~保守・運用の技術分野のどちらを専門としたいかによって、身につけるべきスキルも変わってきます。
以下、セキュリティエンジニアとして働くうえで必要となるスキルをご紹介します。
セキュリティ構築の幅広い知識
前述の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「セキュリティエンジニアに必要な16のスキル」内では、セキュリティエンジニアとして働くうえで最も欠かせない知識の一つとして、セキュア設計・開発・構築のスキルが挙げられています。特に外部や内部のネットワークからの脅威に備えるためのセキュリティ構築(ネットワークセキュリティ)や、設備や機器に対する攻撃を防ぐためのシステムセキュリティの構築の知識などの、セキュリティ構築に関する幅広い知識が求められます。
情報セキュリティマネジメントへの理解
情報セキュリティマネジメントとは、重要な情報の安全性を確保し漏えいや改ざんなどのリスクから守るために、体系的な管理や運用を行うことを指します。セキュリティエンジニアは、情報をどう扱うかといった情報セキュリティへの理解が求められます。
プログラミングスキル
セキュリティエンジニアは各プログラムにセキュリティ対策を施すためのプログラミング(セキュアプログラミング)を行う場合もあります。また、脆弱性を見極めるために他エンジニアが書いたプログラミングを読む必要があります。そのため、プログラミングに関する知識は積極的に身に付けるようにしましょう。
セキュリティエンジニアに必要なプログラミング言語はシステムによって異なりますが、多くのWebサイトで使用されているJavaScriptやPHP、汎用性の高いC言語やC++などを習得すると、役立つ機会が多いでしょう。
コミュニケーションスキル
セキュリティエンジニアとして活躍するためには、高いコミュニケーションスキルも欠かせません。エンジニアの仕事はパソコンと常に向き合い黙々と作業しているイメージがあるかもしれませんが、実際にはクライアントとのコミュニケーションが常時発生します。適切なセキュリティ施策を施すためにも、クライアントとの日頃のコミュニケーションの中で相手が抱える課題や要望を見極め、解決するために必要な情報を引き出す必要があります。
セキュリティエンジニアの資格
セキュリティエンジニアに転職するうえで必須となる資格はありませんが、関連したセキュリティ資格を取得することで転職に有利に働く場合があります。以下、セキュリティエンジニアへの転職に役立つ資格をご紹介します。
シスコ技術者認定
シスコシステムズ社が開催するシスコ技術者認定の中には、セキュリティ分野における認定資格制度もあります。セキュリティエンジニアへの転職を目指している場合には、以下のような資格を取得することをおすすめします。
- CyberOps Associate-セキュリティ分野の基礎的な知識について認定
- CCNP Security-インフラ関連やセキュリティのトレンドから出題
- CCIE Security-セキュリティ分野の高いスキルを持ち合わせたエキスパートとして認定
公式ホームページ:https://www.cisco.com/c/ja_jp/training-events/training-certifications/certifications.html
CompTIA Security+
CompTIA Security+は、CompTIAが主催するセキュリティ資格で、日本だけでなく全世界で広く認知されています。試験内では、ITセキュリティに関する幅広い知識(脅威・脆弱性・リスク管理・認証と暗号化技術など)が問われます。将来的にグローバルレベルで働きたいとお考えの方には非常におすすめの資格となっています。
公式ホームページ:CompTIA Security+ | CORE|CompTIA JAPAN (コンプティア 日本支局)
情報処理安全確保支援士
情報処理安全確保支援士は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する、情報セキュリティに関する知識や技能を認定する国家資格です。情報セキュリティに関するネットワークやアプリケーション、ハードウェア、法令まで、幅広い知識が問われます。
公式ホームページ:https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/sc.html
情報セキュリティ管理士
情報セキュリティ管理認定試験は、情報セキュリティに関する全般的な知識を有する人材を育成するために実施されている資格です。1級から3級まで3つのグレードに分かれており、どれもしっかりと対策を行うことで比較的容易に取得することができるレベルとなっています。
試験は、「情報セキュリティ総論」「脅威と情報セキュリティ対策」「コンピューターの一般知識」の大きく分けて3つの分野から出題されます。
公式ホームページ:TOP | 情報セキュリティ管理士認定試験 (joho-gakushu.or.jp)
セキュリティエンジニアのキャリアパス
セキュリティエンジニアエンジニアとしての一定の経験を積んだ後は、主に以下のキャリアへの転職が可能となります。
- セキュリティアナリスト
- セキュリティコンサルタント
- CISO(Chief Information Security Officer)
基本的にはセキュリティエンジニアとして培った知識を活かして、セキュリティ関連の職種にキャリアアップするケースがほとんどとなっています。以下、詳しく見ていきましょう。
セキュリティアナリスト
セキュリティアナリストは、サイバー攻撃の分析や報告、そして具体的なソリューションの提案を行うITセキュリティの専門家です。セキュリティに関する非常に高度な知識と分析技術を必要とするため、比較的転職の難易度が高いセキュリティ関連職の一つとなっています。
セキュリティエンジニアと比較してもより高度に専門化された知識が必要とされているため、セキュリティアナリストに転職ために、まずセキュリティエンジニアとしての経験を積みスキルアップを目指すケースも多く見られます。
セキュリティコンサルタント
セキュリティエンジニアとして培った経験やスキルは、セキュリティコンサルタントとして働くうえでも非常に役立ちます。経営的な視点・知識を学ぶことで、ビジネス全体に影響を与えることのできるコンサルタントへの転職は十分に可能です。
以下の記事では、現在のセキュリティコンサルタントの仕事内容や採用動向、セキュリティコンサルタントとして働く魅力について解説しています。

セキュリティコンサルタントの採用動向と今持っておきたい資格、次のキャリアの選択肢をご紹介
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CISO(Chief Information Security Officer)
CISO(Chief Information Security Officer)とは、企業における情報セキュリティの最高責任者を表す役職名です。企業の役員クラスの役職として、企業内のあらゆる情報セキュリティにおいて責任と最終決定権を持ちます。裁量権の大きいCISOには、セキュリティエンジニアとしての技術的な知識や経験、そしてビジネススキルやリーダーシップが求められます。
また、この他にも、他のITエンジニアと同様に、独立してフリーランスとして働き始めるケースも見られます。以下の記事では、フリーランスエンジニアとして働くメリットについてご紹介しています。

フリーランスエンジニアのメリットとデメリット、必要なスキルとは
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セキュリティエンジニアに転職するには
未経験と他分野エンジニア職からセキュリティエンジニアに転職するには、まず何から始めれば良いのでしょうか。
未経験からセキュリティエンジニアへの転職
業務範囲の広いセキュリティエンジニアの求人で、未経験の方を対象としているものは非常に少ないのが現状です。そのため、未経験の場合、まずは独学やスクール、大学の社会人コースなどでセキュリティエンジニアとして必要なスキルを身に付ける、もしくは他のエンジニアとしての実務経験を積むことが優先されます。
以下の記事では、未経験からサイバーセキュリティを学びたいという方に向けたおすすめの国内・海外のサイバーセキュリティ分野の大学や大学院のコース、そして社会人でも学べるプログラム職業実践力育成プログラム(BP)認定制度をご紹介しています。

サイバーセキュリティ分野を一から学ぶには?おすすめ大学と社会人向けプログラム(BP)認定制度を解説【2023年】
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他のエンジニア職からセキュリティエンジニアへの転職
エンジニアとしての実務経験がある場合、セキュリティエンジニアへの転職のためのハードルは比較的低くなっています。前述の情報セキュリティマネジメントやセキュリティ構築に関する知識を身に付けることで、転職がよりスムーズに進むでしょう。セキュリティ関連の資格の取得を目指してみても良いでしょう。
セキュリティエンジニアへの転職を成功させるには
ここからは、セキュリティエンジニアへの転職を叶えるために押さえておくべきポイントについて解説します。
必要な知識を学んでおく
セキュリティエンジニアは様々な知識が必要となる職種であるため、転職を成功させるためには前述の必須スキルを参考に、今自分に足りない知識が何なのか、また、どのように学ぶことができるかを考えることが大切です。未経験からセキュリティエンジニアとして働くことを目指している場合は、特にネットワークやインフラ関連の知識をまず身に付けることをおすすめします。
資格を取得する
前述の通り、セキュリティエンジニアへ転職するために必須の資格はありませんが、関連した資格を取得することで、転職時のアピール材料となります。今の自分に必要な知識に関連した資格の取得を目指すことで、効率的に学習することができるかもしれません。
IT分野に強い転職エージェントを活用する
転職を成功させるためには、必要な知識やスキルを身に着けるだけでなく、自身の経験やスキルをしっかりアピールすることも大切です。IT分野に強い転職エージェントを活用することで、より自分の強みを生かした転職活動を行うことが可能となります。
セキュリティエンジニアとしての経験の有無に関わらず、まずは転職エージェントに相談してみることをおすすめします。条件に合った案件の紹介から面接のサポートまで、お任せすることができます。
まとめ
セキュリティエンジニアは経験や知識、スキル、素養の全てを問われる職種です。転職の難易度は高いですが、ビジネスに不可欠なセキュリティ分野を扱い企業の大切な情報を守る、非常にやりがいのある仕事です。将来的な需要増も見込まれますので、セキュリティエンジニアとして専門性を磨くことができれば市場価値の高い人材になることは間違いありません。
今後10年20年先を見据えたキャリアアップ・年収アップの選択肢として、セキュリティエンジニアへの転職をご検討の場合はページ下部のフォームからお気軽にご相談ください。サイバーセキュリティ領域に特化したコンサルタントがお力添えをいたします。
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