two people sitting at a table working on programming

この度Computer Futuresは、GumGum Japanのマネージングディレクターを務める若栗直和様、株式会社ローソン 執行役員 マーケティング戦略本部副本部長 兼 商品本部副本部長を務める大谷弘子様、パーソルホールディングス株式会社 Chief Digital Officer 兼 グループデジタル変革推進本部 本部長を務める友澤大輔様、各業界でマーケティング領域をリードする御三方をお招きし、オンラインでのパネルディスカッションを開催いたしました。司会はComputer Futuresでデジタル・オンライン分野における営業とマーケティング領域のリクルーティングを専門に行う吉田茂樹が務めました。

パネリストの方々の略歴についてはこちらのページをご覧ください。

新型コロナウイルス感染症は私たちの生き方や働き方に大きな影響を与え、世界の在り方を変えました。今後、マーケティング戦略や顧客へのアプローチ、またマーケティング領域で必要とされる人材やスキルなども以前とは変わっていくことが想定されます。

2020年上半期に各組織が経験した危機や変化、またそれらに対応していくための対策や今後生まれるであろう機会について、非常に参考になるご意見の数々をお伺いすることができました。ディスカッションの録画映像は以下をご覧ください。

 

 

セッションの概要を以下でまとめております。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大により、会社やマーケティング組織に対してどのような影響がありましたか?

大谷氏:一番大きな変化としては、以前は事業所内や繁華街に位置する店舗が多くの売り上げを上げていたのですが、在宅勤務や外出自粛によってそれらの添付への客足が減り、その一方で住宅地にある添付の売り上げが伸びたことです。これは東京だけではなく、全国的に似たような傾向が見られました。

 

若栗氏:To Bという観点では、広告出稿に関する企業の動向に大きな変化が見られました。新型コロナウイルス感染症の影響が特に大きかったのは3月と4月で、広告出稿がほぼ停止してしまいビジネスにとっても大きな影響がありました。5月以降、経済活動が少しずつ再開したことで持ち直してきていますが、一番大きな変化はビジネスの点というよりも働き方の側面で見られました。具体的には、在宅勤務を中心とする社員の働き方もですが、顧客企業とのかかわり方が今までと大きく変わったと感じます。ビジネス領域としては元々オンラインで完結できる分野ではあるのですが、B to Bの関係構築をウェブ会議でどのように行っていくかというのがここ数か月の課題でした。一方で、取引先のある程度の役職の方だと対面でのアポイントを取るのはなかなか難しいのですが、ウェブ会議だと比較的スムーズに取れるという発見もありました。

 

友澤氏:私たちの業界はTo BTo Cの両方の側面があるのですが、To Cの方でいうと若栗さんもおっしゃっていたように3月と4月は不確実性が高く、今後の見通しが立たないということで広告予算は絞ることになりました。一方でTo Bの営業活動においては、以前からデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めようとしていたものの説得がしづらかった部分があったのですが、これを機にオンラインセミナーやマーケティングオートメーションなどの導入が加速度的に進みました。

 

吉田:私たちはクライアント企業の方々とお話しする時に採用関係の話が中心となるのですが、採用に関して言うと新型コロナウイルスによる影響というのはマイナスな面が多く、ネガティブな話を聞くことの方が多いのですが、今の皆様のお話を伺うと、プラスの影響や新たなビジネスチャンスが生まれている部分もあるということで、業界によってもインパクトが様々だという印象を受けました。

 

 

上述の影響を受けて、具体的にどのような対策や施策を講じましたか?

友澤氏:対策としては、働き方をどう変えるか、そしてビジネスをどう変えるかの2つの側面があります。働き方についてはリモートワークに伴って働き方の制度やインフラを変えていくことにはかなり力を入れています。パーソルは子会社が74社ほどあるので、どこまでを統一するか、データをどのように扱うか、などに関して急速な再整備を行いました。

一方でマーケティングや営業の施策については、いっそのことこの機会にYahooやGoogleの広告を止めてみて、どの程度のインパクトがあるのかを測るといったような大胆な施策に取り組む子会社もあります。営業面では、新規案件の取り組みや継続案件の対応に関して、コロナ前と後で常態が大きく変わりました。それにともなってどう対応を変化させていくかは大きな焦点となっています。ただ、以前とはタッチポイントが変わったこともあり、営業はそれらの変化にも対応していく必要があるので大変だと感じます。

 

若栗氏:自社のサービスの仕方を見直したところが一番大きなポイントです。具体的に私たちのサービスはAIで画像と言葉を理解し、その画像と言葉が含まれている記事を読んでいる人の興味を分析してターゲティング広告を行うことなのですが、例えばコロナ前と後では世の中に出ている記事の内容がどれだけ変わっているかという分析を行い、人々の意識の変化などを知ることができるというのも当社のサービスの強みだということを理解できました。金融や経済、自己啓発、キャリアアップに関する話題が増えている傾向が見られます。

それに伴い、マーケティング政策でデータを生かしていきたいという問い合わせも増えました。一方で、この時代において何がベストプラクティスなのかということについては答えが出ていないため、様々なやり方を模索する中の一つとして私たちが各企業のマーケティング活動をどのようにサポートできるかを考えています。

 

大谷氏:コロナ禍において真っ先に取り組んだことは、手指の消毒や透明のカーテンをレジに設けるなどして、お客様とスタッフの安全を守ることでした。また対人の接触を減らすために無人レジを推奨していく取り組みも行いました。

また、外出できず学校も休校となっても、1日3食は食べないといけないですよね。しかし遠くに買い物に行くわけにもいかないため、近くのコンビニで買い物をするという方が増えました。それによって、売れるものも変わってきました。顧客データを分析すると、来ている人の内訳も変わってきていることがわかり、需要に先んじてどのような商品が売れるかを、データとお客様の意見をもとにひたすら考えました。

具体的には不安から来るストック需要が増えました。例えば保存が効くパウチや冷凍食品、家飲みのためのアルコール類などです。また、今までは多くの方がスーパーで買っていたよう卵、牛乳、豆腐、納豆なども売れるようになりました。

無人レジの推奨に加えて、無人店舗の導入も試験的に行っています。日本はやはり現金文化が根強いため、現金が併用できる機械を置いたりもしています。しかしやはり慣れは大切で、今まで無人レジを使ったことのないご年配の方なども一度やり方をお伝えして試していただくとスムーズに利用できるようになることも多いため、今後多くの方に慣れていっていただければと思っています。

 

今後マーケターとして大切にしていきたい点は何ですか?

友澤氏:以前のようにデータからファクトを見ていくことは引き続き大切ですが、今のような不確実性が高い状況においては、何が正解かわからないながらも決めたことをやり抜くというのがより大切になっていくのではないかと思います。マーケティングにおけるキャリアについて話す機会も多いのですが、以前は必要なスキルやデジタルマーケティングの運用例、成功事例が議論されるケースが多かったのですが、最近はどのような行動規範でどう行動すべきなのかというところが話題となることが多くなってきたと感じます。多くの組織が変革を求めている現在、強い気持ちを持って行動に移し、ぶれない軸を持ってやり切ることが特にマーケターにとっては大切になるのだと思います。

 

若栗氏:友澤さんがおっしゃったことに非常に共感します。何かを頼まれるのを待つのではなく、自分で状況を判断して必要だと思うことを進めていく行動力が重要になっていくのではと思います。もちろん失敗する時もあるでしょうし、本当に間違っていたら周りが止めてくれることもあると思うので、まずは原動力を生み出していくことが大切だと思います。

 

友澤氏:失敗することを前提にマネジメントをし、挑戦しやすい環境を作る、人の弱点ではなく強みを活かすことの大切さというのはコロナ以前から変わらず大事なことだと思います。ただ、現在のようなリモートワークの状況になると、人の良いところはより良い方に、悪いところはより悪く方に振れていく傾向が見られます。また、リモートでのフィードバックだと対面よりもきつく感じてモチベーションが下がってしまうこともあるので、本人にどのように感じてもらうかを意識していく必要があると感じています。

 

大谷氏:不確実性が高い中で、ビジネスはスピードアップして求められるものは増えていくという中で、ぶれずに自由な発想を持ちながらも顧客視点を忘れずに、失敗してもよいから挑戦していく、ということが大切になると思います。今までも弊社では推奨されていたことですが、これを機に社長も「失敗はない。そこから学ぶ」という意識で挑戦を続けていきたいと考えております。思ったようにいかないことも多い中で、高いレジリエンス、つまり回復力を持って取り組むことと、アジリティ、つまり機敏に動くことが、これだけ変化が多い世の中においては大事にしていかないといけないなと感じています。

 

また、組織が大きいと、どうしても中の事情が外に反映されてしまいます。このようなインサイドアウトではなく、アウトサイドイン、つまり顧客第一を目指しています。加えて、店長やクルー、フランチャイズのオーナーさんなどとも多くの会話をして、現場の方々の声から何が求められているのかを理解することが重要だと考えています。

 

ポストコロナ時代において、皆様が描く「必要とされる人材像」や「活躍する人材像」を教えてください。

若栗氏:先ほどもお話に出た行動力に加えて、自分が働いている環境や周りに依存せずに物事を考えて実行できる人が今後求められるのではと思います。例えば今後、新たに採用した人と一切対面で会わずに、ずっとリモートで仕事を進めていくということも起きてくるかと思います。そのような中で、環境に対する適応力が非常に大切になっていくと思います。

 

友澤氏:今後、CXO(最高部門責任者)系の人、マネジメントに特化する人、専門知識を持って何かを達成する人、というように分かれていくと思います。今後副業がますます加速していく中で、自分の仕事や興味、専門性の幅を広げるときに、本業で広げるのか副業で広げるのかを主体的に選べるようになってきています。そのような中で、マネジメントに特化するのか、成果を出して仕事を進めていくのか、どちらを目指すのかが分かれてくるのではないかと思っています。

採用側としては、誰を正社員にして、どの専門知識を副業の方々から借りて担保していくのかを考えていく必要があるのではと思います。マーケターは元々代理店やコンサルを使いながら成果を出していくことに慣れているのでその素地はあるはずです。例えば、どのような職務が求められるか、ジョブディスクリプション(職務要件定義)を明確にして、社員であっても社員ではなくても、適切な人材を適切な場所にアサインして成果を生み出せる人、すなわちプロデューサーは社員である必要があると思っています。一方で、専門性を持つ人というのは究極的には社員である必要はないと考えられるくらい割り切って、どのように必要な人を集めていくかを考えてもよいかもしれません。そうはいっても大きな会社にいるとそれも難しいので、今の社員をどのように教育できるかを意識していく必要があると思います。マーケットの中でも、人に教育をして、その人を伸ばせるスキルを持つ人は非常に稀であり、この先かなりのニーズがあるはずです。

 

大谷氏:マーケティングの場合は、特に外資系だと部署を横断して様々な仕事を回していくリーダーを務めることが多くありました。現在所属するローソンは日本の会社ですが、マーケティング戦略本部の下に営業本部や商品本部などがあるという組織構成になっているため、多くの人を巻き込んで仕事を進めていくリーダー的な役割が求められます。そのため、自分の分野で高い専門性を持ちながらも、部門の壁を取っ払って横をつないでいくための、いわゆるT型のリーダーシップを持つ人材が必要になっていくと思います。

また、今までは新卒採用が中心でしたが、このような不確実性が高くて変化の多い時代では人材が育つのをゆっくり待っているというわけにもいかない部分があるので、必要な人材や専門家を外から採用していこうという意見も上がってきていますね。

 

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