
PayPayや楽天ペイ、LINE pay、メルペイ、d払いなど、キャッシュレス決済の手段として日本で普及が進むQRコード決済。一般社団法人Fintech協会に加盟し、フィンテック分野でサービスを提供するInfcurion社が2021年に実施した調査によると、2021年時点のQRコード決済の利用率は2020年と比較して54%と過去最高の割合となり、20代と30代においてはクレジットカードに次ぐ第2位の利用率となっています。
世界におけるQRコード決済の普及の火付け役となったのは、中国のアリババグループが提供するアリペイと呼ばれる決済システムであり、この普及の背景にはジーマクレジット(芝麻信用)と呼ばれる信用スコアの存在がありました(詳しくは以下の記事をご覧ください)。

信用スコア大国、中国
中国ではQRコード決済によって得られたデータを基に信用スコアを算出し、企業や店舗はデータを活かした購買促進を行う、そして消費者はスコアを上げることを目的としてエンゲージメントが高まる、といったサイクルが生まれており、QRコード決済と信用スコアは切っても切り離せない関係にあります。一方、QRコード決済が十分普及した日本においては、信用スコアの普及具合はどのようなものなのでしょうか?以下で解説します。
信用スコアとは?
信用スコアは、一言でいうと社会的な信用を数値化したものです。上述のジーマクレジットの場合、アリペイを使った決済や購買記録、その他アリババ系列のサービスの利用履歴を中心に、AIが独自のアルゴリズムを用いてスコアを算出しているとされています。
クレジットカードの作成やローンを組む際に返済能力を示すためのクレジットスコアは以前から世界で用いられてきましたが、これらがあくまで融資を目的とし、金融機関に向けて開示されることを前提としたものです。一方、ジーマクレジットは融資の際の金利優遇に加え、ホテル宿泊やレンタカーにおけるデポジット免除や、病院や空港での待ち時間が免除されるなど、日常の様々な場面で利益を享受することができます。
信用スコアのメリット
消費者の立場から見た信用スコアのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 高いスコアを獲得することで、上述のように日常生活において様々な優遇処置を受けることができる
- 互いの信用情報が可視化されることで、特にオンライン上のやりとりなどを安心して行うことができる
また、融資を行う銀行にとってはクレジットスコアよりもさらに詳細な信用情報が手に入るため、審査にかかる時間が減る、不良債権のリスクを軽減できるなどのメリットに加え、人と人とのやりとり(仕事の契約から家の賃貸契約に始まり、フリマアプリのような比較的少額の売買契約など)を仲介するオンラインサービスを提供する企業にとっても、利用者間のトラブルリスクを軽減できるなどのメリットがあります。
信用スコアのデメリット
消費者にとってのデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 購買履歴からSNS出の交友関係など、様々な個人情報を提供しなくてはならない
- 信用スコアの算出基準が必ずしも明確ではなく、スコアが下がった際に利用できるサービスが制限される可能性がある
また、社会的な懸念としては、信用スコアによって特定のサービスを利用できる人と利用できない人が生まれ、格差が拡大することが考えられます。
2019年時点での日本における普及具合とは?
「信用スコアは日本で普及するのか?」と題した以前の記事では、2019年時点の日本における信用スコアの普及状況を解説しました。

信用スコアは日本で普及するのか?
この時点では、日本では普及に至っておらず、その後の普及においても多数のサービス乱立や、日本と中国で個人情報提供に対する認識が違うこと、また中央集権的に様々なサービスやプラットフォームを横断してデータを収集することの難しさなどが課題として挙げられていました。
2022年現在の状況
2019年と比較してQRコード決済が大きく飛躍を遂げた現在も、日本では信用スコアの普及は見られていません。一方で、コロナ禍で存在感を増したUber EatsやAirbnbやギグ・エコノミーの台頭によって需要が高まっているクラウドワークスやココナラ(スキルシェアサービス)、そして2021年には月間利用者が2000万人突破と市場の拡大を続けるメルカリに代表されるフリマアプリなど、各プラットフォーム上でユーザー同士が評価をし合う、いわゆる口コミ投稿が一般的になっており、利用者間のトラブルを防ぐという点で信用スコアと同様の役割を担っています。
中国との大きな違いとしては、中央集権的に様々なサービスやプラットフォームを横断してデータを収集することの難しさが挙げられますが、決済システムから銀行、EC、モバイルキャリアなど多岐にわたるサービスを展開する楽天グループや、PayPayを傘下に持ち、Yahoo!の連結子会社化やLINEとの経営統合などその経済圏を拡大するソフトバンクグループなど、様々なプラットフォームにおける消費者行動データが容易に獲得できる土台が完成している企業も見られます。
一方で、楽天グループやソフトバンクグループにおいても、購買履歴や信用情報は融資やユーザーのエンゲージメントを高めるという目的で使われており、社会的なステータスを反映するものとしては認識されておらず、中国のジーマクレジットと全く同じ形での普及は今後も考えづらいでしょう。
BNPLにも注目
QRコード決済サービスを提供する企業の近年の動きとしては、信用スコアへの注力よりもBNPLサービス(Buy now pay later、つまり後払いサービス)の展開が挙げられます。BNPLは一般的な融資よりやクレジットカードよりも消費者にとっては利用のハードルが低く、また額も少額あることからカ融資する側の企業にとっても低リスクで融資が可能です。これらは信用スコアなしでも利用できるサービスであるため、今後BNPL がより普及していくことで、信用スコアの必要性に陰りが見えてくる可能性も考えられます。
BNPLについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。

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