
現在、フィンテック(Fintech)業界はIT業界の中でも盛り上がっている事業領域の一つと言えます。コロナ渦からの企業業績の回復は、勝ち組と負け組の格差が拡大し、「K字型」に引き裂かれていくという二極化議論も強まっていますが、着々とサービス拡大を行い、大規模な資金調達を成功させた国内のスタートアップ・ベンチャー企業も数多く存在します。今回はフィンテックのスタートアップやベンチャー企業への就職・転職をお考えの方に向けて、フィンテックの各分野における主要スタートアップ・ベンチャー企業をご紹介します。
「フィンテックのサービス11分野と有名企業を徹底解説。新卒・未経験から就職することは可能?【2021年最新】」の記事ではフィンテック業界に関する基礎知識をご紹介しておりますので、是非こちらもご覧ください。
フィンテックの国内主要スタートアップ・ベンチャー企業一覧
【決済】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
まず、決済の分野で注目のフィンテックスタートアップ・ベンチャー企業をご紹介します。決済は主にスマホ端末を利用した決済方法や、QRコード決済のサービスです。2016年から2017年頃にかけて中国でスマホ決済・送金が盛り上がったことを受け、日本でも今後のスマホ決済の普及に向けて大手企業からスタートアップ企業まで、様々な企業が注目をしていました。現状電子決済市場では、楽天やYahoo!などのインターネットレイヤーの会社や通信キャリアの大手企業の参入、そして政府のキャッシュレス推進の動きから、ユーザー数も利用する機会も急激に増えています。
「【フィンテック】日本で電子決済サービス普及が遅れた理由と今後|キャッシュレス先進国と比べて見えてきた課題とは」の記事では、日本におけるキャッシュレスの現状とこれからのサービス拡大への課題を、キャッシュレス先進国と比較しながら解説しています。
Paidy
Paidyは今年3月に行われた1.2億米ドルの資金調達によりユニコーンクラブ入りしたと同時に、フィンテックスタートアップにとって過去最大級の調達額として業界の中でも大きな話題となりました。Amazon JapanもPaidyの導入を開始し、今後のさらなる躍進に期待が高まります。オンラインショッピング向けに、クレジットカード不要の後払い決済(BNPL)サービスも提供しています。(BNPL決済について、詳しくは次の章で解説しております)。
Z Holdings(代表サービス:PayPay、LINE、Yahoo!)
日本一のユーザー数を誇る電子決済サービスの開発・運営を行っているPayPayを中心とするサービスを傘下に持つ企業です。2021年に入ってからもコマース領域で新施策を続々とリリースしており、今後さらに決済の連携が進むことが見込まれています。
株式会社Kyash(代表サービス:Kyash)
送金・決済システム「Kyash」は、国内におけるBaaSモデルの先駆けとなる存在であり、国内テック企業を支える存在とされています。今年に入ってからもレンタカー店舗での利用やセブン銀行ATMでの出金が可能となり、後払いサービスの提供も開始されるなど、今後も利便性の向上が期待されています。
【BNPL】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の拡大で電子商取引の使用が増加し電子決済の需要が増えたことで、近年BNPL(Buy Now Pay Later)と呼ばれる後払いシステムが脚光を浴びています。矢野経済研究所によると、日本では後払いサービスを通した取引規模が昨年基準では8820億円に過ぎませんでしたが、2024年には1兆8800億へと2倍以上増加すると予想されています。

こちらの記事では、BNPLとは何か、そして日本や海外での普及の様子やBNPLサービスを展開する代表的な企業に加え、転職先の業界としての魅力についてご紹介しております。宜しければご覧くださいませ。
記事を読む【融資・ローン・個人資産運用】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
融資・ローンの分野ではAIを活用した顧客の審査や信用スコアの算出、金利・限度利用額算出、そしてこれらを実現することによる人件費の削減や業務の効率化が注目されています。これに加え、スタートアップ・ベンチャー界隈では、顧客と金融機関との最適なローンのマッチングをサポートするサービスが特に参入しやすい分野として盛り上がりを見せています。
個人資産運用の分野でも、AIによる自動運用やスマホで気軽にできることを売りにしたサービスが登場しています。資産形成に興味を持つ人が増えている中、今まで資産形成や株取引に興味のなかった人たちをターゲットにしたサービスが増えており、今後も成長が見込まれる領域です。
MFS(代表サービス:MOGE)
MFSは、2009年に中山田明氏によって設立された企業です。2018年3月の約3.3億円の調達に引き続き、2021年3月に6.5億円の資金調達を実施しており、これらの資金により「住宅ローン審査に通る確率を上げるために個人の信用力をいかに向上させるか」に関連する提案機能や人工知能の開発およびエンジニア採用を拡大するとしています。代表サービスであるオンライン型住宅ローンサービスMOGE CHECKは、毎月およそ2000名がサービスを利用しており、2021年時点で累計約5万人のユーザー数を誇っています。
WealthNavi
2015年4月に財務省やマッキンゼー・アンド・カンパニーで活躍した柴山 和久氏によって設立されたWealthNaviは、次世代の金融インフラを構築したいという想いから、ロボアドバイザーによる個人資産運用サービスの提供を始めました。主に働く世代の資産形成に焦点を当てており、仮にこの世代の老後に備えた資産形成の動きが加速した場合、ロボアドバイザーの潜在市場は今後10年で約20兆円に上るとも考えられています。今後成長が期待できる企業です。
五常・アンド・カンパニー株式会社
途上国で事業向け小口金融サービスを展開する五常・アンド・カンパニー株式会社は、インドやカンボジア、ミャンマー、スリランカなどの途上国地域において新会社の設立または既存の事業者の買収を通し、持ち株会社としてグループ事業を統括し運営しています。日本国内では知名度はあまり高くない印象を受けますが、「民間版の世界銀行」という壮大なビジョンを掲げ、2014年から質の高いマイクロ・クレジットサービスを展開し続けている国内有数のフィンテックスタートアップの一つです。
TORANOTEC株式会社(代表サービス:トラノコ)
2016年設立のTRANOTEC株式会社は、金融サービス投資やフィンテック開発、アプリ運営を行っています。代表サービスの「トラノコ」は、毎日の買い物のおつりを5円から自動的に世界中の資産に長期分散投資することを可能にしています。高度なテクノロジーを駆使し、投資が誰にとっても身近なものである世界を目指しており、今後のさらなる躍進も期待されています。
【会計・財務】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
会計・財務の分野は今までクラウド化されていない基幹業務システム(ERP)が主流とされていましたが、近年はfreeeやMoney Forwardなど、SaaS企業のIPOが増えています。近年のDX化の流れにより、今後も成長が見込まれる領域です。
freee
2012年に設立されたfreeeは、「アイデアやパッションやスキルがあれば誰でも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」創りの実現を目指し、法人・個人事業主向けのSaaS型クラウドサービスを開発、運営しています。Freeeの会計ソフトは現在80万以上の事業所が利用しており、簡単な決済書作成や、自動での帳簿作成が可能となっています。freeeの累計資金調達数は62億円以上で、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルやシンガポールの政府系ファンドなど、グローバルな有力投資家から高い評価を受けている企業です。
Mikatus(代表サービス:A-SaaS)
「いい税理士を当たり前に」をビジョンに掲げ、税務・会計・給与といった税理士業務の効率化と、顧問先(税理士の顧客)への税務面や経営面の支援を同時に実現するオールインワンシステムを開発、運営しています。昨今の新型コロナウイルスの流行により、税理士業界でもテレワーク導入が促進され働き方も大きく変化しつつある中、2021年9月にはブラウザ版A-SaaSをリリースするなど、今後のさらなる技術革新に目が離せない企業の一つです。
【仮想通貨・ブロックチェーン】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
2018年1月のNUM流出事件以降、仮想通貨を取引する人も激減し、業者に関しても新規に参入できない、もしくは途中で清算してしまう企業も増えました。現在も新規参入のハードルは非常に高い分野ではありますが、生き残ったサービスで取引することは可能で、最近ではビットコインの価格も回復しています。
ブロックチェーンの分野においても、2018年~2019年頃までベンチャー界隈において多く見られた「ブロックチェーン×〇〇」をキャッチコピーとしたサービスや事業の立ち上げが減り、最近では新規のブロックチェーン絡みの企業は少なくなっています。一方、既存の企業は現在も成長を続けているものも多く、今後の動きに注目するべき分野と言えます。
LayerX
LayerX(レイヤーエックス)は、2019年7月にGunosyの創業者である福島良典氏にMBOで事業譲渡する形で設立された、GunosyとAnyPayによるジョイント・ベンチャーです。ブロックチェーン関連の技術コンサルティングや、ブロックチェーン・サービスの開発、実証研究、ブロックチェーン技術を軸に、金融領域など様々な産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しています。進める中で課題が多いとされているDX化ですが、LayerXはブロックチェーンを活用することで、SaaSやERP、基幹システム、業務システムを繋ぐことができ、ワークフロー全体をデジタル化することができるという強みを持っています。
2020年5月には、約30億円の大型資金調達を実施し、資金は商用化のための事業会社設立や、これらに対応した事業・プロダクト開発、人材採用に充当する予定であると発表しています。
bitFlyer
bitFlyerは、2014年に設立された国内最大級の仮想通貨取引所です。アカウントの作成・維持手数料から、販売所全通貨売買手数料、ビットコインFX取引手数料をはじめとしたあらゆる手数料が無料なのが魅力です。ビットコインの取引量も多く流動性が非常に高いため、他の仮想通貨取引所よりも取引がスムーズに行えるとユーザーからの評価が高く、この領域において今後も注目の企業です。
【資産管理】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
ここからは、資産管理(PFM)分野におけるスタートアップ・ベンチャー企業をご紹介します。PFMとは「Personal Financial Management」の略で、具体的にはID連携機能を使い複数の銀行・証券やクレジットカードなどの口座情報を一元的に管理するサービスなどが該当します。日本国内では「Money Forward ME」が利用者は1000万人を越えるなど、現在成長が著しいフィンテックの分野です。
マネーツリー株式会社(代表サービス:Moneytree LINK)
2012年に日本で創業したマネーツリー株式会社は、金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」をベースに、個人向け資産管理サービス「Moneytree」および企業向けにデータ連携サービスを提供しています。国内において、金融・会計業界の標準APIとして認知され、人々に信頼されるデータプラットフォームの構築を目指しています。米国セールスフォース・ドットコム、三大メガバンク系ファンド、SBIインベストメント、地域金融機関系ベンチャーキャピタル、フィデリティー・インターナショナルなど海外大手運用会社から出資を受けています。
MoneyForward
2012年設立のMoneyForwardは、個人向け家計簿アプリ「Money Forward ME」と法人向けの「Money Forward Cloud」シリーズを主要サービスとする企業です。2012年に辻庸介氏によって設立され、2017年には東京証券取引所マザーズ市場入りを果たしました。法人向けのマネーフォワードクラウドでは、事業者向けSaaS型サービスにより、会社経営の現状や課題をリアルタイムに可視化し解決へ導きます。
BearTail(代表サービス:Dr.Wallet)
BearTailは、「時間革命で体感寿命を延ばす」ことをミッションに掲げ、無駄な時間を減らして豊かな時間を創る企業を目指しています。代表的なサービスである「Dr.Wallet」は、撮ったレシートをオペレーターが目視、手入力でデータ化する、全自動の無料家計簿アプリです。企業向けにもスマートフォンで自動経費精算が可能な「Dr.経費精算」を提供しており、300社以上の企業で導入されています。
【保険】フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業
InsurTech(インシュアテック)とも呼ばれている保険の分野ですが、長らく業界を率先してきたライフネット生命に代わり、近年はスタートアップやベンチャーの参入が増えてきています。InsurTechにより、保険会社は保険業務の効率化や革新的な商品を生み出すことが可能となり、コストの削減も実現しています。
JustInCase
「新スマホ保険」やシェアリングエコノミーの懸念を保険に応用したP2Pモデルのサービス「わりかん保険」を提供しています。参入当時は既存の国内大手保険会社がデジタル化を内製する動きが強かったことから、大きな注目を集めました。2019年には10億円の資金調達を達成し、大企業とのパートナーシップ強化のためのインフラ構築や人材採用の拡大、新規事業開発の加速のために使用すると発表しました。
Hokan
Hokan(ホカン)は、2017年に株式会社ベイカレント・コンサルティングにて保険業界を中心としたマーケティング戦略・IT戦略立案・投資管理・PMOなどに従事していた、尾花 政篤氏によって設立されました。保険証券を「見える化」することで、グラフやデータを利用した営業活動を実現するクラウドサービスを提供しており、これにより見込み顧客の発見から契約成立まで一元管理が可能となっています。また、保険代理店の開業や独立のためのノウハウや資格などに関するウェブメディアや、InsurTech全般に関する情報サイトの運営、さらには、総合相談窓口において保険事業参入に関するサポートも行っています。
フィンテックのスタートアップ・ベンチャー企業に適した人材とは?
フィンテックは今後大きな飛躍を見せ、やがて社会インフラの一部として機能していくことが想定される一方、比較的新しい業界のため、金融やITなど基盤が確立している業界と比べると安定性という点では欠ける部分があります。また、日々数多くの競合ベンチャーが生まれ、競争が激しい分野でもあるため、そのような環境でやりがいを感じ、企業へと価値を与えることのできる人材がフィンテックのスタートアップ・ベンチャー企業への就職や転職に適していると言えます。
具体的には好奇心旺盛であること、勉強熱心であること、最新情報に敏感であること、また、専門知識を持ちながらも幅広い分野に精通していることなどが求められます。やはり、金融や営業の知識を持ち合わせた人材を中途採用で獲得したいという企業が多いものの、新卒の採用枠も広がっています。新卒採用で求められることは若い発想力を駆使し、斬新なアイデアを提案することが中心となるため、この能力を持ち合わせていれば、フィンテック業界のスタートアップ・ベンチャー企業は、ご自身の力を存分に発揮できる最適な就職先となるでしょう。
フィンテックスタートアップ・ベンチャー企業|まとめ
フィンテックのスタートアップ・ベンチャー企業は、IT業界の中でも今後成長が期待できる領域です。この業界に携わりたい方、非IT業界から転職を考えている方にもおすすめの業界ですので、現在迷われている方は是非この機会に転職エージェンシーに相談してみることをおすすめします。
弊社でもフィンテック関連企業への転職を目指す方へのアドバイスを行っております。また、業界の展望や他業界との比較など、各種ご相談も随時受け付けております。フィンテック領域のスペシャリストをお探しの方、また当領域におけるスタートアップ・ベンチャー企業でのキャリアアップの機会をお探しの方は以下のフォームからお問い合わせください。